周りの人が避難について話しているのを見たときの避難意思の強さを問う設問のデモ画面Webによるアンケート調査画面の作成27Nagaoka University of Technology Integrated Report 2023私たちの生活を様々な形で脅かした新型コロナウィルス感染症の例を持ち出すまでもなく、現代は地球規模で広がり(Global)、不確実性が高く(Uncertain)、個人に判断が求められる(Individual)リスクに溢れています。自然災害もそのひとつであり、特に昨今、気候変動により風水害の頻度や規模が拡大するという警鐘が世界中で鳴らされています。日本でも、1時間降水量が80mmを超えるような大雨の発生回数は、40年前と比べ約1.8倍に増加しており、水害による資産被害額も増加傾向にあります。 私は、こうした社会にあって、市民が主体となった災害にも強いまちづくりとはいかに実現できるのかという研究テーマを掲げ、災害を生き延び、その後も安心して暮らせる地域をつくるため、被害を受ける前に市民ができる学びや助け合いの手法について考えています。災害に「も」の「も」は、地域は防災のためだけにあるのではなく、人口減少や高齢化が進む社会にあっても、ふだんから安心して暮らせるまちづくりが、結果的に災害に「も」強いまちの姿につながると考えているからです。 災害に備えるための学びには色々あります。例えばハザードマップを見たりして事前に準備することも重要ですし、近年では避難情報をきめ細かく発信する手段も増えています。しかし私は、最終的環境社会基盤系松田 曜子准教授には人間どうしが「いかに声をかけあえるか」ということに尽きると考えています。避難は、個人の意思決定による行動とみなされてきましたが、本質的には他者との関わりの中で引き出される結果という側面も大きいからです。 ただし、その手段は、昔ながらの広報車や直接の声かけとは限りません。私たちは例えば、SNSのプラットフォームが地域コミュニティで普段から機能していれば、災害時の避難にも役立つのではないかと考え、実際の地域や社会調査でその妥当性を検討しています。いずれにせよ、ふだんから地域に声をかけあう場があるということが重要だと考えています。災害にも強いまちづくりの実現に向けて
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