長岡技術科学大学 2023 統合報告書
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図1.バイオガス直接燃焼によるマイクロフレーム図2.マイクロフレームと熱電変換を組合わせた小型燃焼発電システム研研究究28 IoTやMEMS技術の発展に伴い、センシングや無線通信に用いる小型デバイスの導入量が今後さらに増加すると見込まれています。将来的に世界の全電力消費量に占めるこれらのデバイスの割合は高くなると予想されており、この電力需要を賄うため未利用かつクリーンなエネルギー源からマイクロワット〜ミリワット程度の出力ができる新たな電力変換技術が求められています。 以上の背景から、私はバイオガス燃焼に基づく高効率発電技術について研究をしています。バイオガスは生ごみや生物の排泄物から生成される非枯渇性の再生可能資源であり、成分中にメタンを含むカーボンニュートラルな燃料です。メタンやプロパン等の炭化水素燃料のエネルギー密度はリチウムイオン電池のそれと比較して2桁以上大きく、燃焼エネルギーからの直接電力変換は次世代の小型電源として有望だと考えています。しかしバイオガスは、不燃性の物質を多く含むため燃えにくく、直接燃料として利用するのが困難であり、かなりの量が廃棄されているのが現状です。これまでの研究で、バイオガスの燃焼メカニズムと安定した直接燃焼のための条件・燃焼器構成を明らかにし、直径1mm程度のマイクロフレームを安定形成させ微小熱源を作り出すことに成功しています(図1)。さらに、この微小熱源と熱電変換を組合わせた小型燃焼発電システムシステム安全系佐藤 大輔講師(図2)で最大約30mWの発電量を達成し、IoT機器用電源としての利用可能性を実証しています。この技術は、天候や気温などの環境条件による発電量の低下がほぼなく、燃料の投入量を変化させることで出力電力を調整できるメリットがあります。現在は、発電性能のさらなる向上とともに、使用機器の必要電力の変化に同期した高速な出力スイッチングを実現するための構造設計と制御手法の開発に取り組んでいます。 この研究は、技術の発展と脱炭素社会を支えるための、未利用エネルギーを活用した低環境負荷発電技術を創り出す取り組みで、SDGsのゴール7と9への貢献が期待できます。未利用エネルギーを活用した環境に優しい電力変換技術を創る

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