長岡技術科学大学 2024 統合報告書
29/56

 近年、計算機やAI技術の飛躍的進展により、シミュレーションを活用した材料設計が産業界から脚光を浴びています。量子力学に基づく手法を用いて材料の電子状態を計算することで、材料の電気特性や光学特性などの重要な物性を理解し、新しい材料の開発や既存材料の改良に役立てています。例えば、次世代リチウムイオン電池や太陽電池、高性能半導体デバイスや磁性デバイスを設計において、材料の電子状態計算シミュレーション結果が大いに参考にされています。 材料は原子の組合せによって、その結晶構造と性質が決定されます。しかし、その組合せは無限に存在し、実験だけで材料設計するには、時間も材料費も限界があります。この問題を解決するため、私たちの研究グループでは、原子の組合せを指定するだけでその結晶構造を予測する手法とソフトウェアの開発に取り組んでいます。 結晶構造探索では様々な原子の配置を考慮する必要があるので、非常に難しい探索問題になりますが、近年発展してきた機械学習などのAIの技術を活用することで、探索の高速化が進み、安定な結晶構造の予測が可能となってきています。私たちはこのような結晶構造探索シミュレーションを行うことが可能なソフトウェア「CrySPY」を開発し、オープンソースとして公開しています。CrySPYは大学や企業の研究者に材料開発のツールとして広く用いられており、その貢献がが評価されて、一般社団法人HPCIコンソーシアムの2024年度HPCIソフトウェア賞開発部門賞奨励賞を受賞しました。 今回の受賞は、私たちの研究が多くの研究者や産業界に役立っていることを示すものであり、今後のさらなる発展を目指していく励みになります。今後も、材料設計における革新的なソリューションを提供し、次世代の技術革新に貢献していくことを目指して、研究と開発を進めてまいります。電気電子情報系山下 智樹 准教授28図1結晶構造探索手法を用いた材料設計図2電池材料の電子状態AAIIとと電電子子状状態態計計算算にによよるる材材料料設設計計をもたらす学際的研究

元のページ  ../index.html#29

このブックを見る