長岡技術科学大学 統合報告書 2025
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で Nagaoka University of Technology Integrated Report 2025 19Activity Results 02図 1図 2図 3フレキシブルデバイスへの応用例 熱の拡散の影響のない Cuドットの析出マルチパルスによる析出観測系機械系溝尻 瑞枝 准教授 パルス幅が10-15秒オーダのフェムト秒レーザは、時間的に濃縮された高密度な光で、レンズで集光すると空間的にも濃縮されます。このような光は透明な材料に対しても半波長の光と同等に吸収を発現することがあります。私は、この局所吸収によるエネルギーで、熱拡散を抑えつつ局所加熱し、金属析出させる研究に取り組んでいます。将来的には、材料内部へ任意構造を書き込み、3D微細造形への応用を目指しています。 具体的には、透明原料として金属錯体や金属酸化物ナノ粒子などを調製し、フェムト秒レーザパルスを集光照射します。その結果、焦点近傍の高光子濃度領域のみで吸収が生じます。繰返しパルスを照射すると、少しずつ材料が加熱され、金属ナノ粒子の形成・成長を経て、焼結・溶融が起こり、金属が析出されます。この析出は、単パルスだけで完結する現象ではなく、繰返しレーザパルスが照射されることで初めて金属が析出することが分かってきました。一方、照射するパルス数が過剰になると、熱拡散によって照射部周囲へも金属析出してしまい、「太いペン」で描くことしかできなくなるため、加工分解能が低下してしまいます。そこで、金属の成長速度を制御する界面活性剤を原料の錯体に添加することで、照射部以外への余分な金属析出を抑制できました(図1)。 更に最近では、マルチパルスの照射により、原料錯体からどのように金属が析出していくかを、ピコ秒オーダの「ストロボカメラ」の原理で観測することに成功しました。これまでも単パルスにより完結する現象に関しては同じ原理で超短時間現象を観測した報告はありますがマルチパルスによって初めて生じる金属析出現象をとらえたのは世界で初めてです(図2は計測光学系の一部)。今後はこれまでにセンサに応用してきた炭化現象の解明(図3)や金属の3D微細造形に応用し、センサを簡単にプリントできる技術に発展させたいと思います。時空間的に濃縮した“光” による局所加熱を利用した金属 析出―3D 微細造形への応用を目指して学術研究 ソーシャル

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