名古屋大学 大学案内 2023
12/104

「メイド・イン・ジャパン品質の細胞が世界に広がる ことを目指しています。」新しい薬としての細胞を作る再生医療のものづくりテクノロジー 11GUIDE TO NAGOYA UNIVERSITY 2023ResearcherPROFILE博士(工学)。専門は細胞分子情報学分野。再生医療での功績が認められ、日本再生医療学会The Johnson & Johnson Innovation Award2017受賞、島根大学発ベンチャー企業との研究チームがNEDO「AIベンチャーコンテスト」最優秀賞受賞(2018)。大学院創薬科学研究科 准教授再生医療を支える工学的な技術開発 再生医療では、体の中にある細胞を人工的に体外で培養し、活性化や機能を高めるなどして治療に使います。体の修復や再生パワーの源である細胞を治療に使うと、従来の薬では治らなかった病気や怪我が治ることが昨今の研究で次々と明らかになりました。特にiPS細胞が発表された2006年以降、再生医療は急速に発展し、生きた細胞は治療に使うための最も新しいジャンルの薬として広がりつつあります。私たちの研究室では、再生医療で使う治療用の細胞を製品として良い品質で作るため、工学的なものづくり技術の開発をしています。特に注力するのが細胞の品質管理技術の開発です。 再生医療で使う治療用の細胞を世界中の患者様に届けるには、高品質な細胞を大量かつ安定的に作るためのテクノロジーが必要不可欠です。患者様から採取したわずかな細胞を体外で長期間培養し、生きたままの品質評価は大変難しく、培養熟練者による高度な目利きと手作業に頼るのが現状でした。1品はまだ数千万円にも及びます。そのために私たちは、画像解析とAIのテクノロジーによる品質判定技術を開発。細胞を傷つけることなく定量的に評価するとともに、品質を事前に予測できる画像診断プログラム開発により、安全かつ効率的に品質管理が行える技術の実用化に成功しました。またこの技術をWebで使えるようなツールとして、システムの製品化と支援サービスの提供を開始しています。 次の目標は、細胞の品質評価技術における国際標準化を作ることです。メイド・イン・ジャパン品質の細胞として、より安心で効果のある日本の細胞医薬が世界に広がることを願っています。多分野融合で再生医療・創薬開発を 医療や創薬の研究は、医学や薬学の領域と考えられがちですが、私が所属する創薬科学研究科は、薬学、理学、工学、農学、医学と多分野が融合して研究開発を行っています。そして今、再生医療分野には、細胞医薬の産業化に向けて、自動車、カメラ、家電など、ものづくり産業の企業研究者が多数参入しています。本研究科でもさまざまな企業との共同研究開発が進められ、海外の研究者や研究員との国際交流も活発です。融合型の研究だからこそ新しいパワーが生まれ、より多くの患者様を救うことやライフサイエンスの発展にも貢献できます。多分野の学びに興味がある人は、私たちとぜひ一緒に挑戦してもらえたらと思います。加藤 竜司05

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る