(第12回〈令和3年度〉日本学術振興会育志賞受賞・ 令和3年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 人間の体はタンパク質で構成されており、タンパク質には必ず窒素(N)が含まれています。その窒素のほとんどは植物が根から吸収した土の中の窒素栄養に由来しているため、植物の根が効率よく窒素栄養を吸収する仕組みを解明することで農作物の収量アップ、ひいては食糧問題の解決に繋がると考えられます。このような背景の中、私は名古屋大学での研究によって、植物が窒素不足状態になると葉っぱで窒素要求ホルモンが作られ、そのホルモンが根っこでの窒素吸収を促進することを発見しました。このホルモンはイネやダイズなど多くの植物に存在するため、農業分野での応用が期待されています。 もっともらしく研究のことについて書いてみましたが、実を言うと入学当初からこの研究をやりたいと思っていたわけではありません。「生物学をやりたい」と思っていたものの何をやりたいか定まっていませんでしたが、生命理学科で動物や植物問わず様々な分野のハイレベルな講義や実習を受けるなかで現在の研究室に巡りあい、研究の世界に踏み入ることとなりました。面白い研究を行っている研究者があちこちにいる名古屋大学で、ぜひ皆さんも面白いと思えることを見つけてください。(令和2年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 私は熱や電気、そしてスピン(磁気の源)の流れの変換現象について研究しています。エネルギー問題が深刻化している今、私たちの身の回りにある熱エネルギーの有効活用や、熱エネルギーの高度な制御に対する注目度が高まっています。そして熱をマネジメントするには他のエネルギー形態との変換効果が鍵となります。私は熱と電気の変換効果や、熱とスピンの変換効果(熱スピン効果)に焦点を当て,「熱を測る」という観点から研究を行ってきました。中でも,熱スピン効果はここ10年ほどで発見された新現象であり、そのメカニズムの全貌は明らかになっていません。私は光を使った高速温度センシング技術を用いることで,熱スピン効果の高速応答特性を明らかにし、そのメカニズムに迫ることができました。 熱とスピンの融合研究領域は世界的規模で研究が進められている、まさに「熱い」分野です。私は名古屋大学に入り、指導教員の先生や周りの環境に恵まれたからこそ、この最先端の研究に携わることができました。他にも世界トップレベルの研究が数多く存在する名古屋大学で、一度研究の世界にどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか?決して一筋縄でいくものではありませんが、最先端を体感したという事実は将来の糧になると思います。(第12回〈令和3年度〉日本学術振興会育志賞受賞・ 令和3年度名古屋大学学術奨励賞受賞) アジア諸国の経済発展に伴い、肉やミルクなどの畜産物の需要は急増しており、畜産物を効率的に得るための技術の改善が急務です。肉やミルクの生産は、家畜が妊娠し、子を産むことで可能となりますが、現在、牛の人工授精をしても、その半数以上が妊娠できず、大きな課題になっています。繁殖成績を向上させるためには、家畜を含むほ乳類の生殖メカニズムを明らかにする必要があります。私は、キスペプチンニューロンと呼ばれる神経細胞に着目し、この神経細胞が卵巣での卵胞発育を刺激するメカニズムを、モデル動物のネズミを使い、遺伝子改変やウイルスによる遺伝子導入など最先端の技術を駆使して明らかにしました。今後は、この神経細胞の活動を調節するメカニズムの詳細について研究し、牛の繁殖成績向上に繋げ、畜産物生産の効率化に貢献したいです。 私は、名古屋大学に入学し素晴らしい先生方や仲間達に出会うことで、研究をやり遂げることができました。今後さらに研究を発展させるために、新しい研究分野の知識や技術も学びたいと考えています。名古屋大学は、学生が異分野との融合研究に踏み出すためのサポート環境が整っています。世界トップの研究に携わり、ワクワクしながら学業や研究に打ち込んだ経験は、これからの人生で大きな力になると思います。(令和3年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 私の研究対象は、財政・公共経済学という学問領域の中で、財政競争と呼ばれる分野です。財政競争とは、税・補助金・インフラ整備などの政策手段を用いて、企業・投資・人材などを誘致する国家間・地域間の競争のことです。代表的な例として、企業誘致のための法人税引き下げ競争が挙げられます。研究は、財政競争が経済にどのような影響を及ぼすのか、その功罪の解明とよりよい経済状況をもたらす仕組みや制度の開発を目的としています。近年、財政競争分野では雇用問題との関係が着目されています。私は、国・地域の雇用改善を目的に政府が企業や工場を誘致する自然な設定の下で、よりよい経済状態をもたらす財政政策の制度設計を研究してきました。その中心テーマは財政競争の有害性を解決する財政移転の制度設計です。 経済学は、世界各国で起きている様々な社会問題の本質を明らかにし、その解決手段を提示する学問です。その分析対象は上記のような問題だけではなく、身近な問題も数多く含まれます。たとえば、皆さんが今後直面する学生と企業のマッチング問題や公害などの環境問題、医療の問題、大都市への人口集中問題なども含まれます。人々が関わる問題全てが分析対象といっても過言ではないでしょう。経済学は応用範囲が広く懐の深い学問なのです。経済学部・経済学研究科への進学を目指してはいかがでしょうか。GUIDE TO NAGOYA UNIVERSITY 2023 70理学研究科 生命理学専攻博士後期課程修了工学研究科機械システム工学専攻博士後期課程修了※日本学術振興会育志賞 大学院における学業成績が優秀であり、豊かな人間性を備え、意欲的かつ主体的に勉学及び研究活動に取り組んでいる大学院博士後期課程在学者で、当該大学長または所 属する学会長から推薦された者を対象に受賞者が決定されます。日本学術振興会より、毎年度、全国で16名程度に賞が授与されます。※名古屋大学学術奨励賞 名古屋大学大学院博士後期課程に在学する学生で、人物・研究水準ともに優秀、かつ、研究科長及び指導教員から推薦のあった者を対象に受賞者が決定されます。名古屋 大学より、毎年度、学内で10名以内に賞が授与されます。生命農学研究科 動物科学専攻 博士後期課程3年経済学研究科社会経済システム専攻博士後期課程修了大久保 祐里 さん出身校: 香川県 高松第一高等学校山﨑 匠 さん出身校: 大阪教育大学附属 高等学校池田校舎長江 麻佑子 さん出身校: 徳島県立徳島北高等学校菊池 悠矢 さん出身校: 宮城県 東北学院高等学校 名大生の研究発表
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