名古屋大学 令和6年度 入学者選抜要項
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 国語の問題は〈現代文〉1題、〈古文〉1題、〈漢文〉1題の計3題を出題します。(国語を課す学部のうち、理学部、医学部および農学部の志望者は〈現代文〉のみを解答することになります。)いずれも、国語に関する基礎知識を前提に、問題文の正確な読解力と思考力、そして解答をまとめる表現力を問います。 〈現代文〉は、まず、問題文が正確に読み取れているかを問います。そのため、漢字の読み・書き取りについても、文脈を正確に理解していないと解けない問題も出題しています。設問は、記述式の問題が中心ですが、その設問に答えていくことで、問題文のより深い読解ができるように配慮しています。また、傍線部や空欄の前後だけではなく、文章全体を論理的に把握した上で、細部にも目を向けていくような読み方を求めています。解答にあたっては、与えられた字数内で的確に表現する力も測ります。 〈古文〉は、まず、基本的な語彙・文法、和歌・俳句などについての知識、そして文学史などの基本的な知識が身についていることが前提です。その上で、問題文の全体的な論旨の流れ、作者の心情、和歌・俳句などの解釈、比喩の意味などを理解することを求めます。さらに、解答にあたっては、限られた範囲の字数で適切に表現する能力についても測ります。 〈漢文〉は、漢文を読み解く前提となる、基本的な重要語および句法(句形)を理解しているか、そして、文脈の中で適切に口語訳あるいは書き下しができるかを問います。その上で、問題文の読解にあたっては、文脈を正確に把握することはもちろん、その文章内の時代背景や思想、登場人物についても理解できているかを判断します。また、解答にあたっては、与えられた字数内で適切に表現する能力についても測ります。 世界史では、古代から現代までの世界の歴史事象について、高等学校までに学校教科書で学ぶ世界史の基礎知識を踏まえて、問題文と関連史資料を正確に理解し、設問に的確に答える力を判定します。また、論述問題では、これまでに修得した世界史の知識を踏まえて、制限字数の範囲内で設問に対する自分の考えを論理的にまとめる思考力と構成力を特に重視します。 世界史が対象とする地域は多岐にわたっていますが、それらの地域の歴史について考えるにあたっては、常に私たちが暮らしている現代の社会がその出発点となります。しかし、このことは、決して時空間を遠く隔てた世界の歴史事象の軽視を正当化するものではありません。世界の歴史は時系列に沿って単純に展開するものではなく、そこにはその時々において繰り返し参照される過去があり、それが歴史の動態に様々な影響を及ぼしていることを見逃してはならないでしょう。また、複数の世界のあいだで行われた交易や戦争、あるいは思想の伝播などの複雑な異文化交渉がしばしば歴史の原動力となったことにも、注意が向けられなくてはなりません。これらのことは、教科書の静態的な叙述を漫然と読み流しているだけでは理解が難しいことかもしれませんが、歴史書、文学作品、映像、絵画や音楽などの芸術作品も手がかりとすることによって、世界各地の過去の人々の暮らしに対するイメージを膨らませながら、個々の歴史事象とその相互関係を理解するように努めてください。 日本史では、原始・古代から現代までを対象にして、高等学校までに学校教科書で学ぶ歴史・日本史・世界史の基礎知識を踏まえて、問題文を正確に読み解き、設問および関連資料をも活用しながら、与えられた制限字数の範囲内で的確な語句・文または文章で答案を作成する力を判定します。 日本史が対象とする地域は「日本」ですが、その意味する範囲は時代によって広がったり縮んだりして変化します。そうした変化は、「日本」という地域内に生きた人々の営みや、「日本」を取り巻く周辺地域との人的・物的・文化的な様々な相互交渉によってもたらされてきました。「日本」を取り巻く周辺地域として分かりやすいのは、たとえば朝鮮半島や中国大陸といった「外国」でしょうが、日本史を教え学ぶ立場からすれば、日本列島内部にもそうした周辺地域は存在します。また、そうした「日本」という地域の伸縮は、「日本」という概念にも変化を与えることになりますから、現代における「日本」「日本人」「日本文化」について、相対的、批判的、多角的に考え直すことが必要となってきます。こうした様々な変化は学校教科書にも記述されていますが、少し意識しないと見過ごしてしまうかもしれません。時代や地域の変化に留意しながら、原始・古代から現代にいたる時代それぞれの歴史的事象を理解するよう努めてください。 設問には歴史資料や図表などが添えられることがあります。それらは学校教科書に掲載されている資料・図表ばかりではありませんが、これまでに学習してきた日本史ほかの教科を通して身につけた知識を使うことによって読み解くことができるものばかりです。未知の資料・図表であっても、そうした既知の知識を活用して的確に判断できるよう求めるものです。そして、答案は一定の字数制限のもとで作成することになりますから、筋道を立てて説明する論理的な文章を的確に整理して書くよう努めてください。―29―6.個別学力検査実施教科・科目の出題方針教科・科目等国語世界史地理歴史日本史出 題 方 針

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