名古屋大学 令和6年度 入学者選抜要項
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 地理では、現代世界にかかわる様々な地理的事象について、高等学校までに学校教科書で習得する〈系統地理〉、〈地誌〉の知識を踏まえて、問題文と図表を正確に読解し、的確な表現と適切な字数で設問に答える能力を判定します。 〈系統地理〉は、自然地理学と人文地理学の二つに大別されます。前者においては、地震や火山、河川、氷河などによって形成される地形、気温や降水量、風といった要素の総合的な状態を扱う気候、気温や降水量と密接に関係する植生や土壌、さらには環境問題や災害などに代表される自然環境と人間生活との関わりを理解することが求められます。後者においては、現代世界における資源、農林水産業や工業、商業といった産業、人口分布やその変化、都市・村落の機能とそれらの変容、衣食住に代表される生活文化、民族・宗教に関する諸事象の空間的特徴とそれらが生起する要因について問います。〈地誌〉では、歴史や文化などを基礎とし、現代世界を構成する諸地域をさまざまな空間スケールで多面的・多角的に考察し、現代における多様な地域の今日的な特徴や課題を深く理解する能力が要求されます。 地理の出題では、こうした〈系統地理〉と〈地誌〉に関する基本的な知識とともに、総合的な地域理解の基本ができているかどうかを重視します。地表面における自然環境と人間活動を基本として、地理的事象にどのような空間的な規則性や傾向性がみられるのか、位置や距離、空間的な配置、時間変化に留意して、各種の地図や図表、写真などからそれらを読み取ることができるかどうかを問題にします。とくにさまざまな地理情報が表現されている地図の活用および読解能力は必須です。 数学では、答えを求めさせる問題以外に、証明問題も出題することがあります。いずれの場合も、解答の形式は、いわゆる論述形式であり、答えを求めさせる問題の場合でも、答えの導出にいたるまでの道筋を記述させて評価対象とします。これにより、高校までに学習する数学の基礎に対する理解を前提とし、名古屋大学での学習に必要な数学的能力が十分に身に付いているかを評価します。問題の趣旨を的確に把握する理解力はもちろんのこと、与えられた前提条件から結論にいたるまでの解答の筋道を組み立てる論理的思考力や、必要な計算をこなして結果を導く計算力、限られたスペースに解答を筋道だった文章で的確にまとめる表現力を測ります。さらに、数学的知識の系統的な理解を必要とする分野融合問題の出題などを通じて、数学の応用力も測ります。これらの能力は互いに独立ではなく、例えば適切な計算量によって計算結果を導くには、計算も予測を持って行う必要があり、論理的に考える力が必要になります。また、それぞれの問題がいくつかの小問から成る場合は、小問の間の関連性を捉えることが求められ、理解力に留まらず、論理的思考力や直観力が問われます。この意味で、数学の能力は総合的に測られるべきものであり、総合的な数学力を測ることのできる問題を出題するようにしています。なお、文系と理系では、出題範囲・試験時間・問題数は異なりますが、出題方針は同じです。 物理では、「物理基礎」および「物理」の範囲から出題します。高等学校の物理では、目的意識をもって観察・実験を行うことを通じて、物理学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め、体系化された知識に基づいて自然の事物・現象を分析的かつ総合的に考察する能力を身につけることを目標としています。物理学の基礎知識や考え方は、「力と運動」、「熱とエネルギー」、「波」、「電気と磁力」といった様々な概念や原理・法則を系統的に理解するために必須のもので、これらの十分な修得が必要です。 出題では、物理学に関する基本的事項の理解度と物理学的な考察力・探求する能力を見るために、本学が指定する出題範囲から、なるべく分野的な偏りがないようにします。出題にあたっては、物理法則や関係式などの知識や最終的な答を問うだけでなく、そこに至る過程を論理的に述べる記述式問題も出題し、物理的な知識、思考力、理解力、計算力、論証力を総合的に評価します。 化学では、「化学基礎」および「化学」の範囲から出題します。高等学校の化学では、原子・分子と化学結合に関する正しい理解に基づいて、物質の性質や変化についての基本的な概念や原理・法則の理解を深めることを目標としています。自然界に存在する物質、生物体を形成し生体内で働く物質、人間生活を支える目的で作り出された物質、環境問題や持続性に関連する物質などについての幅広い知識を論理的に組み合わせて活用する能力、またそれらを観察や実験を通して得られた知見と結び付けて活用する能力が必要です。 出題では、「無機化学分野」、「有機化学分野」、「理論化学分野」などの枠にとらわれず、教科書の発展的内容なども出題するなど、各分野にわたった総合的な内容を重視します。化学反応式や数式で表された物質やエネルギーの状態や変化を理解し予測する力、観察・実験結果を物質の性質や変化に関する原理や法則と結びつける力、グラフ・図・化学構造式などの含まれる化学的な情報を読み解く力、実験結果などの図表として記述する力、観察・実験の目的と試薬・器具・条件・手順などとの関連を理解する力、解答に至る過程を論理的に記述する力、などを評価します。―30―教科・科目等地理歴史地理数学物理理科化学出 題 方 針

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