名古屋大学 医学部医学科案内 2024
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8◆生物統計学◆神経情報薬理学/分子細胞薬理学◆神経遺伝情報学◆分子腫瘍学◆腫瘍生物学◆分子病理学◆機能再生医学◆システム生物学◆機能分子制御学細胞を蛍光顕微鏡で撮影。左:神経細胞 中央:線維芽細胞 右:上皮細胞図説. 神経筋接合部において病的バリアントが同定された35遺伝子(赤字)疾患などの生命現象の多くは、複雑なメカニズムをもち、大きな個体差を伴うものですが、実際に生命現象のデータを収集し、解析することで、現象の背後にある法則性に関する推論が可能になります。当教室は、さまざまな医学研究でのデータの収集と解析に関する統計的方法論の研究と実践に取り組んでいます。細胞は、細胞内外の情報を受け取り、特有の形態を呈し極性を獲得しています。これらの過程は細胞が臓器や組織で特有の機能を発揮するために必須であり、生命活動の根本とも言えます。我々の研究室では、細胞の形態、運動、接着、極性の分子機構を解明することにより、精神・神経疾患の病態を細胞レベルから解き明かすことを目標にしています。以下の7つの主たる研究テーマに取り組んでいます。(1)神経筋接合部の分子構築とその分子病態・病態制御、(2) RNA代謝の正常制御と病態、(3) パーキンソン病の腸脳相関解析、(4) 筋・骨・軟骨・靭帯の分子構築と病態制御、(5) 分子状水素の分子作用機構、(6) 超微弱変動磁場の分子作用機構、(7) オミクス解析ツール開発と応用。遺伝子がどのように機能するのか?この問いは、遺伝子と環境の相互作用によっておきる「がん」などの多くの疾病のメカニズムを理解する上で非常に重要です。私たちは、ゲノム・エピゲノム・RNAネットワークの関係性を読み解く技術・解析を統合することで、遺伝子制御とがんにおける異常を俯瞰的に研究し、がんの克服に貢献することを目指しています。がんは遺伝子異常を原因とする疾患です。遺伝子異常は細胞核内のDNAに傷がつく異常だけではなく、遺伝情報の使い方に問題がある場合も遺伝子異常としてがんの発生に影響します。私たちは疾患発症に関わる遺伝情報の使い方を研究することで、がん細胞を取り巻く生命現象の探究から、がんの弱点を狙う新しい治療法を開発することを目指しています。分子病理学分野では病理学・形態学に基づく病理組織標本の観察を基本に、がん細胞の移動・浸潤およびがんの間質(かんしつ)の線維化のメカニズムの解明とその治療応用を目指して研究を行っています。がん間質の線維化と心不全、腎不全、肺線維症などの線維化疾患の両者にみられる共通の分子の仕組みにも着目し、臓器横断的・疾患横断的な研究を展開しています。機能再生医学では、神経軸索伸長のメカニズムの解明に取り組んでいます。特にDystrophic endballと呼ばれる中枢神経損傷後の変性構造の理解と制御を通して、神経軸索の再生と、脊髄損傷や脳梗塞など神経損傷疾患の克服を目指しています。最先端のデータサイエンスを機軸に、膨大な生命情報を読み解くための数理モデルや情報解析技術を開発し、生命現象や疾病の理解に資する医学研究を行っています。特に、次世代シークエンサーを初めとする最先端技術より計測されるゲノムや遺伝子発現など網羅的オミクスデータを解析する人工知能(AI)技術の開発を行っています。機能分子制御学分野では、悪性腫瘍、神経組織や自己免疫疾患において重要な機能を果たしている分子の同定と作用機構を解明し、それを踏まえた難治疾患の新規治療法の開発をめざしています。とくにタンパク質や脂質に付加する糖鎖に注目し、増殖や炎症、分化のシグナルの調節機構を、糖鎖リモデリング細胞や遺伝子ノックアウトマウスの解析を通して明らかにします。IgGはFc領域にN型糖鎖結合部位を1箇所持ち、多様な糖鎖構造が形成されています。また、関節リウマチなどの自己抗体を誘発する自己免疫疾患において自己抗体上の糖鎖(シアル酸)が減少することが判っています。そこで、自己抗体IgG上にシアル酸を付加すると、自己免疫疾患を制御できることがわかってきました。臨床医薬学神経疾患病態統御部門腫瘍病態統御部門先端応用医学部門研究・診療紹介

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