名古屋大学 工学への道 2024
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▲エネルギー理工学専攻 柚原 淳司 准教授近年、結晶でもなくアモルファスでもない「準結晶」が発見されました。準結晶は、原子が周期的に並んでおらず、準周期性と呼ばれる特異な規則性に従って並んでいます。この特異な規則性は、高次元結晶(ハイパーマテリアル)から実空間への射影により記述されます。当初、金属間化合物で発見され、最近、金属酸化物においても準結晶が存在することが明らかとなりました。当研究グループは、希土類金属酸化物ハイパーマテリアルを世界に先駆けて創製しました。今後、構造の解明や物性の評価、さらにはエネルギー関連材料としての応用が大いに期待されます。▲材料デザイン工学専攻 山本 剛久 教授材料デザイン工学専攻は、シンクロトロン光や超高分解能透過電子顕微鏡を展開する先端計測(髙嶋圭史教授、山本剛久教授)、マテリアルを計算機で設計し実現する先端理論計算(足立吉隆教授、君塚肇教授、小山敏幸教授、原田寛教授)、計測、理論グループと連携してマテリアルを創出する(入山恭寿教授)各グループから構成されており、物質プロセス工学・化学システム工学専攻と連携し、資源から社会実装までを包括する先端研究に取り組んでいます。図は入山恭寿教授らが最近見いだした黒鉛負極と固体電解質を組み合わせることで実現する超高速充放電の成果です(新学術領域研究(領域代表)、NEDO)。リチウムイオン電池は有機電解液を用いるため、黒鉛負極と電解液の界面で生じる溶媒分解や脱溶媒和過程が充放電反応速度を大きく低下させていましたが、全固体電池は固体電解質を用いるため、これらの阻害因子がなくなり、超高速充放電が可能となることを見いだしました。▲土木工学専攻 中村 晋一郎 准教授土木工学は、インフラの整備と管理を通して、自然災害から人の暮らしを守り、社会・経済活動を支える基盤をつくるとともに、豊かな生活空間を実現するための学問です。よって、土木工学は自然と社会の両方を理解し、社会に対して適切なソリューションを提示していく必要があります。国土デザイン研究室では、自然と社会の相互作用に着目して、そのメカニズムを解明し、そこから得られた知見を用いた地域や国土のデザイン手法について研究しています。特に近年では、気候変動の影響も相まって洪水や土砂災害等の水災害が各地で頻発しており、新たな治水対策の検討が焦眉の課題となっています。中村晋一郎准教授は、日本の治水対策に着目し、その手法が、いつ、どのような経緯で構築され、それが自然災害や社会要請とともにどのように変容してきたのかを、歴史的な史料や長期データを用いて明らかにしました。その成果は書籍として出版され、令和2年度土木学会出版文化賞など三つの賞を受賞しました。▲環境学研究科 都市環境学専攻 飯塚 悟 教授世界中の過半数以上の人々が生活を営む「都市」では、地球温暖化とヒートアイランドと呼ばれる都市固有の温暖化のダブルパンチにより、暑さが増しています。地球温暖化はますます深刻さを増し、さらに、東南アジア諸国などの成長著しい国々の都市では、その発展に伴い、ヒートアイランドも進行する一方です。このような暑さは、快・不快の範疇を遥かに超えて、人間健康を著しく害する「危険な暑さ」となってきています。 私たちの研究室では、成長国都市の1つであるインドネシア・ジャカルタを対象として、地球温暖化の進行下かつ都市発展が進む状況下で、 都市の暑さがどのような状態になっていくかを最新鋭のコンピュータシミュレーションを駆使して予測し(図)、さらに、その暑さを緩和する策やその暑さに適応する策の導入検討を行っています。▲機械システム工学専攻 長野 方星 教授小惑星リュウグウの表層から探査機「はやぶさ2」が採取し持ち帰った粒子の熱拡散率を、独自に開発したロックインサーモグラフィ式周期加熱法を用いて非接触で計測することに成功しました。得られた熱慣性(物質の熱しやすさの指標)は、リュウグウの表層よりも3倍以上大きく、リュウグウ表層内には熱遮■効果を持つ多数の亀裂の存在が示唆されます。本計測データは太陽系の成り立ちの解明へと繋がることが期待されています。本研究成果は、はやぶさ2初期分析チームの成果の一部として科学雑誌Scienceに掲載されました。超高速充放電の成果HFO-1234yfを混合した自然系ガスにおける高温下分解による生成化学種リュウグウ熱物性計測装置および位相データ金属酸化物超薄膜 (a)結晶 (b)準結晶 (c)近似結晶図 インドネシア・ジャカルタの将来都市計画(左)と暑熱環境予測(右)令和元年東日本台風による長野県長野市の被害の状況(撮影:中村晋一郎)2大電力機器・伝送システムの現象と特性を解き明かす▲電気工学専攻 横水 康伸 教授大電力機器・伝送システムの特性・現象解明と高性能化を目的として、統計力学・物理化学・量子化学・大電流工学などの理論を複合適用させ、研究を進めています。これらの研究の一つでは、電力機器メーカーとの共同研究として、自然系分子とHFO系分子からなる混合ガスについて、大電流遮断プロセスにおける構成化学種の変化、ひいては高温下での電気絶縁耐力を見いだしています。ここでは、 HFO系分子の分子定数などを導出し、次いで、約100種に及ぶ多原子分子などの化学種に対して、独自考案した安定収束計算手法にて解に導いています。さらに、分析から主要な反応とその優先性、ひいては適正なHFO系ガス混合率を提案することに成功しています。小惑星リュウグウの熱物性を独自技術で分析“理論計算、シミュレーション、AI、そして、高度先端計測技術を展開したマテリアル創出”ハイパーマテリアル­高次元物質科学の創出­歴史から未来の防災を考える地球温暖化と都市発展がもたらす暑さの将来予測:インドネシア・ジャカルタを対象として

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