名古屋大学 大学案内 2024
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Researchers at Nagoya University「細胞の観察は予想外の展開ばかり。それを突き詰めていくのが研究の醍醐味です。」細胞間コミュニケーションの実体や動作原理を明らかにするResearcherGUIDE TO NAGOYA UNIVERSITY 202410細胞間コミュニケーションに着目 多細胞生物は、発生の過程で環境の変化や遺伝子の突然変異などの影響を受けても、最終的には決められた形・大きさを形成するロバストな仕組みがあると考えられていますが、その実体はほとんどわかっていません。私たちはこれまでに、ショウジョウバエ幼虫の発生が遅れると、翅原基(将来、翅を形成する幼虫期の組織)では、細胞死と細胞増殖がさかんに起こることを見いだしました。つまり、「細胞が死んで、その分、周りの細胞が増える」ことで、組織の正味としての発生速度を遅らせて、それにより、個体の発生速度と足並みを揃えていると考えられます。 このように、細胞同士が協調する、あるいはときには生存を競い合う、いわゆる細胞間コミュニケーションは、発生に限らず、がんの発生・進展にも重要な役割を果たしています。名古屋大学で新たな知見を広げる 名古屋大学は物理、数学、農学、創薬など幅広い分野が集まり、異分野融合を目指す研究も活発です。同じモデル生物を用いても新たな視点が得られるため、異分野の研究者との共同研究も積極的に今後進めていきたいと考えています。同じ生物学でも植物、魚、昆虫など多種多様なモデルが使われているOHSAWA Shizue大学院理学研究科生命理学専攻遺伝学グループ 教授PROFILE専門は生物学、遺伝学。東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了 薬学博士。日本学術振興会特別研究員DC2(三浦正幸研究室) 、 神戸大学大学院医学研究科グローバルCOE研究員、日本学術振興会特別研究員SPD、京都大学大学院生命科学研究科 准教授(井垣達吏研究室)を経て、現在に至る。のも魅力です。さらにITbM(トランスフォーマティブ生命分子研究所)での顕微鏡の活用、化合物スクリーニングの実施予定など、高度な最先端研究を展開する大学で新たな知見を広げていくことは大きなメリットだと感じます。 名古屋大学の理学部は最初から専攻を定めずに、約1年間広範囲を学んだ上で興味をもった分野に進むことができます。私自身、学生時代に化学から生物へと専攻を変えましたが、当研究室にも生物をやっていなかった、物理も生物も興味があるなど、いろんなバックグラウンドを持った人が在籍しています。また、研究を進める上で大事なのは、愛着の持てるものがあることです。私はもともと細胞死に興味を持ったことがきっかけとなり、現在も細胞死が絡んでいるような現象を研究しています。顕微鏡で細胞を観察していくと、自分の頭では予想もしなかったことばかり起こります。筋書き通りにはいかない展開を、どんどん突き詰めていくプロセスが生物学の面白いところ。さまざまな視点から発想が生まれてこそ良い研究ができるので、皆さんも積極的に考え、いろんなことにチャレンジしてほしいと思います。大澤 志津江04

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