名古屋大学 大学案内 2024
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GUIDE TO NAGOYA UNIVERSITY 202470(第12回〈令和3年度〉日本学術振興会育志賞受賞・ 令和3年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 人間の体はタンパク質で構成されており、タンパク質には必ず窒素(N)が含まれています。その窒素のほとんどは植物が根から吸収した土の中の窒素栄養に由来しているため、植物の根が効率よく窒素栄養を吸収する仕組みを解明することで農作物の収量アップ、ひいては食糧問題の解決に繋がると考えられます。このような背景の中、私は名古屋大学での研究によって、植物が窒素不足状態になると葉っぱで窒素要求ホルモンが作られ、そのホルモンが根っこでの窒素吸収を促進することを発見しました。このホルモンはイネやダイズなど多くの植物に存在するため、農業分野での応用が期待されています。 もっともらしく研究のことについて書いてみましたが、実を言うと入学当初からこの研究をやりたいと思っていたわけではありません。「生物学をやりたい」と思っていたものの何をやりたいか定まっていませんでしたが、生命理学科で動物や植物問わず様々な分野のハイレベルな講義や実習を受けるなかで現在の研究室に巡りあい、研究の世界に踏み入ることとなりました。面白い研究を行っている研究者があちこちにいる名古屋大学で、ぜひ皆さんも面白いと思えることを見つけてください。(令和4年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 私たちの身の回りの物質は「どのような原子や分子が、どのように並び、どのように相互作用するか」によってその性質が決まります。そのため、物質・材料中の原子の並び(結晶構造)を調べることで、物質の特性(物性)がどのようなメカニズムで現れているのか、どういった変化を加えれば材料特性が向上するのかを明らかにできます。結晶構造を調べる方法は多数存在しますが、私はX線を試料に照射した時に生じる回折現象を活用して結晶構造を明らかにしています。これまでに、半世紀以上未解明だったとある物質の構造解明に成功したり、新たな物質群である無機柔粘性結晶を発見したりなど、様々な物質について結晶構造を明らかにすることで物性の起源解明を行ってきています。 研究を行うためには様々なものが必要になります。私の場合はX線が使用できる環境が必要ですが、名古屋大学においては学内のX線装置の他に、愛知県内にあり名古屋大学との連携が盛んなあいちシンクロトロン光センター、国内にあり世界トップの大型施設SPring-8といったX線施設の利用をしています。X線に限らず名古屋大学は多数の施設、装置が利用でき、非常によく整備された研究環境が整っています。この優れた環境で皆さんと一緒に研究できることを楽しみにしています。(第12回〈令和3年度〉日本学術振興会育志賞受賞・ 令和3年度名古屋大学学術奨励賞受賞) アジア諸国の経済発展に伴い、肉やミルクなどの畜産物の需要は急増しており、畜産物を効率的に得るための技術の改善が急務です。肉やミルクの生産は、家畜が妊娠し、子を産むことで可能となりますが、現在、牛の人工授精をしても、その半数以上が妊娠できず、大きな課題になっています。繁殖成績を向上させるためには、家畜を含むほ乳類の生殖メカニズムを明らかにする必要があります。私は、キスペプチンニューロンと呼ばれる神経細胞に着目し、この神経細胞が卵巣での卵胞発育を刺激するメカニズムを、モデル動物のネズミを使い、遺伝子改変やウイルスによる遺伝子導入など最先端の技術を駆使して明らかにしました。今後は、この神経細胞の活動を調節するメカニズムの詳細について研究し、牛の繁殖成績向上に繋げ、畜産物生産の効率化に貢献したいです。 私は、名古屋大学に入学し素晴らしい先生方や仲間達に出会うことで、研究をやり遂げることができました。今後さらに研究を発展させるために、新しい研究分野の知識や技術も学びたいと考えています。名古屋大学は、学生が異分野との融合研究に踏み出すためのサポート環境が整っています。世界トップの研究に携わり、ワクワクしながら学業や研究に打ち込んだ経験は、これからの人生で大きな力になると思います。(令和3年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 私の研究対象は、財政・公共経済学という学問領域の中で、財政競争と呼ばれる分野です。財政競争とは、税・補助金・インフラ整備などの政策手段を用いて、企業・投資・人材などを誘致する国家間・地域間の競争のことです。代表的な例として、企業誘致のための法人税引き下げ競争が挙げられます。研究は、財政競争が経済にどのような影響を及ぼすのか、その功罪の解明とよりよい経済状況をもたらす仕組みや制度の開発を目的としています。近年、財政競争分野では雇用問題との関係が着目されています。私は、国・地域の雇用改善を目的に政府が企業や工場を誘致する自然な設定の下で、よりよい経済状態をもたらす財政政策の制度設計を研究してきました。その中心テーマは財政競争の有害性を解決する財政移転の制度設計です。 経済学は、世界各国で起きている様々な社会問題の本質を明らかにし、その解決手段を提示する学問です。その分析対象は上記のような問題だけではなく、身近な問題も数多く含まれます。たとえば、皆さんが今後直面する学生と企業のマッチング問題や公害などの環境問題、医療の問題、大都市への人口集中問題なども含まれます。人々が関わる問題全てが分析対象といっても過言ではないでしょう。経済学は応用範囲が広く懐の深い学問なのです。経済学部・経済学研究科への進学を目指してはいかがでしょうか。理学研究科 生命理学専攻博士後期課程修了工学研究科応用物理学専攻博士後期課程3年生命農学研究科 動物科学専攻博士後期課程3年経済学研究科社会経済システム専攻博士後期課程修了※日本学術振興会育志賞大学院における学業成績が優秀であり、豊かな人間性を備え、意欲的かつ主体的に勉学及び研究活動に取り組んでいる大学院博士後期課程在学者で、当該大学長または所 属する学会長から推薦された者を対象に受賞者が決定されます。日本学術振興会より、毎年度、全国で16名程度に賞が授与されます。※名古屋大学学術奨励賞名古屋大学大学院博士後期課程に在学する学生で、人物・研究水準ともに優秀、かつ、研究科長及び指導教員から推薦のあった者を対象に受賞者が決定されます。名古屋 大学より、毎年度、学内で10名以内に賞が授与されます。大久保 祐里 さん出身校: 香川県 高松第一高等学校小島 慶太 さん出身校: 新潟県立 直江津中等教育学校長江 麻佑子 さん出身校: 徳島県立徳島北高等学校菊池 悠矢 さん出身校: 宮城県 東北学院高等学校  名大生の研究発表

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