名古屋大学 経済学部案内 2025
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合性にあります。経済学・経営学は、第一義的にはサイエンスであり、経済社会を対象とするディシプリンとして、普遍的に成立する抽象的な理論やモデルを志向します。そのために、先行研究を踏まえて自身の仮説を提示し、資料やデータを集めて仮説の成否を検証するという手続きが繰り返されます。他方で、経済学・経営学は実学でもあります。われわれは家計、企業、政府、その他あらゆる経済主体の提起する課題に対し、適切な解答を用意しなければなりません。そこで求められるものは、科学的に確証され普遍的に成立する理論に留まらず、日本であれ、アジアであれ、当該個別社会において観察される一般的知見や経験であるかもしれません。さらに、人々経済学・経営学の特徴はその総の厚生の向上、経済社会的正義の実現を目指す過程においては、人文学的叡智に裏付けられた倫理的価値判断も避けられません。経済学・経営学において、これらの要素の結びつきは不可分です。他の社会科学分野でも、同じような理論・実践・倫理の三要素の交絡はあるでしょう。しかし、経済学・経営学ほどの緊張関係にはないと思われます。近年は専門分化が進み、ともすれば視野狭窄に陥りがちですが、私たちは、この経済学・経営学に固有の不可分性・総合性を常に意識して、研究と教育を進めています。理論×実践×倫理「創統の鐘」の由来「創統の鐘」は、名古屋大学経済学部の前身である名古屋高等商業学校の第一回卒業生によって寄贈された其湛塔の塔頂にあって、二十有余年に亘り授業の開始と終了を告げた時鐘であります。その妙音は近隣の市民にも愛されましたが、太平洋戦争の深刻化とともに、塔は取り壊され鉄材として供出されました。幸い「創統の鐘」は難を逃れ、名古屋大学経済学部に継承され、今日に至っております。鐘銘は初代校長渡辺龍聖氏の撰になるもので、出典は孟子・二巻の「君子創業垂統、為可繼也=君子は業を創め統を垂れ、継ぐべきことを為さんのみ」(君子はのちに発展する事業の基礎を築き、その事業を子孫に伝えるようにすればよい)にあります。先人の志を後輩が受け継いで発展させる、この「創統の精神」が鐘の音とともに永遠に本学に伝えれることを祈念いたします。経済学へのアプローチ1

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