名古屋大学 理学部 2025
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5翼竜ケツァルコアトルスはどう飛んだかソアリング飛行の能力を運動方程式で解明3生体内の2本鎖DNAを直接認識する DNAは生命の設計図であり、非常に精緻な生命システムを構築しています。DNAの情報を、タンパク質という機能へと置き換えるわけですが、適切な場所・タイミングでタンパク質を産生する必要があり、このバランスが崩れるとさまざまな疾患につながります。逆に言えば、DNAの機能を制御することができれば、疾患を治すことも可能となります。このような観点から、我々は2本鎖DNAを直接認識・制御するための技術(人工核酸)を開発してきました。本技術は、さまざまな遺伝子診断や核酸医薬の礎となる高い可能性を秘めています。 絶滅した翼竜や鳥類には、翼を広げた長さが6〜10mに達する種がいます。彼らは、現代のコンドルやアホウドリのように、上昇気流や海上の風を使って羽ばたかずに飛ぶ、ソアリング飛行を主な移動手段に長距離を飛んだと考えられてきましたが、その性能を評価した研究は少数でした。鳥や翼竜のソアリング飛行は、紙飛行機やグライダーと同様にニュートンの運動方程式に従います。この性質を利用して私たちは、史上最大級の翼竜ケツァルコアトルスがソアリング飛行に不向きであったことを発見しました。この結果から、本種は、短距離を飛ぶのみで陸上を主な生活の舞台にしていた可能性が高いと考えられます。 多細胞生物では個々の細胞が互いにコミュニケーションをとりあうことが、決まったかたちに成長したり、変動する自然環境に適応するために必須です。その典型的な例が、ホルモンを介した細胞間コミュニケーションです。これまで植物ではわずかな数のホルモンしか知られていませんでしたが、私たちの研究によって新たに5種類のホルモンが発見されました。「根をすらりと伸ばす」「必要に応じて根からの窒素栄養の取り込みを変化させる」「ダメージを受けた細胞の隣の細胞は予め防御態勢に入る」などのしくみの背景には、ホルモンを介した巧妙な細胞間コミュニケーションが存在しています。右側の根を窒素欠乏にすると左側の根で相補的に窒素取り込みが促進される04化学的に作成したDNA(人工核酸)の活用植物の成長や環境応答を支える巧みなしくみ注目人工核酸(PNA)はその高いDNA結合力から2本鎖DNA中に潜り込む注目ソアリング飛行をする生物としない生物(イラスト:きのしたちひろ)注目野依 良治不斉分子触媒の開発ノーベル賞、文化勲章、学士院賞など森 重文代数幾何学の発展フィールズ賞、学士院賞、文化勲章下村 脩緑色蛍光タンパク質GFPの発見ノーベル賞、文化勲章、朝日賞など深尾 良夫地震波トモグラフィーの開発とそれによる”スタグナントスラブ”の発見アメリカ地球物理学連合よりイング・レーマン・メダル 恩賜賞4技術開発新しい植物ホルモンの発見

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