1医学は高度な自然科学であるとともに、応用科学でもあります。医学の発展は単に人の寿命を延ばすだけでなく、人類に肉体的、精神的、社会的に満たされた状態(ウェルビーイング)をもたらしてきました。近年、医学は飛躍的に発展しましたが、人という複雑で多様性をもった個体を対象とするため、医学には完成というものがありません。技術革新、情報科学の進化も相まって、これからも医学は進歩をし続けるでしょう。名古屋大学医学部は以下の4点を使命とすると定めています;1)人類の健康の増進に寄与し、新たな医療技術の創生を担う人材の育成を進める、2)医の倫理を尊重し、人類の幸福に真に貢献することを誇りとする医学研究者及び医療人を育成する、3)医学研究、医療の両面にわたり諸施設と共同して、地域社会の医療の質を高めるとともに、我が国及び世界の医療水準の向上に資する、4)医学研究及び医療の中枢として機能するために、人的・社会的資源を有効に活用し、世界に開かれたシステムを構築する。これらの使命を果たすため、私たちには、世界に伍する医学研究者・医療人材を育てるという大きな責任があり、そのための多彩なカリキュラムを用意しています。さて、名古屋大学医学部では、2022年度から大きくカリキュラムを変えました。基礎医学・社会医学を前倒しして、より早期に専門医学を学べるようにした一方、リベラルアーツ(一般教養)を高学年でも学べるようにしました。これは、医学・医療のリーダーを育てるには、医学的知識・実践だけでなく、より広い視野と深い洞察力が不可欠という考えに基づいています。さらには、メディカルサイエンスカフェや学生研究会の活動を通して、研究マインドを醸成したり、3年生後期半年間にわたり基礎・社会医学系教室に配属したりして、最先端の研究に触れ、自ら考え実践する機会を与えています。また、6年次には、海外の提携校での臨床実習の機会を設けており、多数の学生が世界に羽ばたいています。冒頭で述べたように、医学はまだまだ発展途上の学問であり、ますます進化していくことでしょう。それを担うのはあなたたちです。医学部での6年間は、専門知識と基礎技術を習得する期間であるばかりでなく、将来医師・医学研究者として活躍するために最も重要な人間性を養うための期間でもあります。さあ、一緒に医学の道を歩み、明日の医学・医療を造っていきましょう。医学部長木村 宏医学への招待
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