1992年、名古屋大学大学院農学研究科農芸化学博士後期課程中退、同研究科助手、理化学研究所植物科学研究センターグループディレクター等を経て、2015年、名古屋大学大学院生命農学研究科教授 名古屋大学高等研究院副院長(兼任)留学生も多い研究室のメンバー実験用植物栽培室にて植物情報分子■原 均 教授 博士(農学) 生物は生きるために多様な有機化合物を当たり前のようにつくっています。しかし、意外かもしれませんが、それらを人の手で人工的につくることは容易ではありません。特に構造が複雑な低分子有機化合物の化学合成はたいへん困難で、それを化学の力で合成したいというチャレンジ精神が有機化学という分野を発展させてきたのです。 たとえばフグ毒(テトロドトキシン)は、とりわけ化学合成が困難と言われる分子ですが、私たちはこの化学合成に成功した世界でも数少ないグループの一つです。フグ毒の人工合成からは、さまざまな研究が発展します。食の安全への貢献はもちろん、なぜフグ毒は中毒を引き起こすのかという分子機構の研究からは、痛み止めなどの創薬にも貢献できると考えています。 フグ毒には、いくつかの■があります。面白いことに、フグ毒はフグ自身ではなく海の微生物がつくっていますが、何のために微生物がこの毒をつくっているかは全くの■です。フグはこの毒を含む■から体内に毒をため込みますが、フグがどのようにこの毒を取り込むのかも■の一つです。フグ毒に限らず生物がつくりだす有機化合物には、不思議な世界が広がっていることをぜひ知っていただきたいですね。 不思議なことに、植物は遺伝子レベルでは同一でも、生育環境が違えば異なる形に成長します。それぞれの個体が異なる環境に応答して、代謝や成長のバランスを最適化するのです。この調和のとれた環境応答を実現するためには、細胞間、器官間での情報の交換と統合が必要であり、植物ホルモンやペプチド、RNAなどの分子が情報の担い手(情報分子)としての役割を果たしています。私たちは、特に植物ホルモンの分子構造に注目して先駆的な研究を進めています。 これまで、サイトカイニンと呼ばれる植物ホルモンの分子構造の微妙な差異が、葉をつくり出すスピードや葉の大きさなどを巧妙に調節するしくみを解明しました。これはモデル植物であるシロイヌナズナで発見した原理ですが、他の多くの植物にも当てはまる大きな成果です。現在は次のステップとして、この分子の植物内での移動を司る、輸送システムの解明に取り組んでいます。 植物のふるまいに関する情報のやりとりを遺伝子レベル、分子レベルで理解することは、今後の世界の作物生産に直接影響を与えうる農学の中心課題といえます。新しい研究分野なので、まだまだわからないことがたくさんあるおもしろい世界です。挑戦する意欲がある若い知性を大歓迎します。1987年、名古屋大学農学部食品工業化学科博士課程前期課程修了、サッポロビール(株)(応用開発研究所)、名古屋大学農学部助手、ドイツStuttgart大学客員研究員、JST「さきがけ」領域研究者(兼任)、名古屋大学大学院生命農学研究科助教授等を経て、2008年、名古屋大学大学院生命農学研究科教授安全に留意しておこなわれる化合物の精製生物有機化学西川 俊夫 教授 博士(農学)研究室では個々の学生が独自のテーマに打ち込む15生物がつくる有機化合物や生物でもつくれない有機化合物を、化学の力で合成することは、究極のものづくりだと思います。植物のふるまいを決定づける分子の働きと輸送システムを解明し、植物の生産性向上に貢献します。LABORATORY TOPICS応用生命科学科 研究室トピックス
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