名古屋大学は、1951年に農学部を設置しました。以来農学部・生命農学研究科は約10,200名の学士、約6,000名の修士、約2,000名の博士学位取得者を世に送り出しています。産業界、行政ならびにアカデミアで活躍できる次世代リーダーの育成を目指し、基礎から応用までの幅広い知識と能力を涵養する教育を実践してきました。名古屋大学農学部では、食料・生物資源の生産、生物資源の利用、生物機能の活用、および生物共生環境を考究し、食・環境・健康に関する諸課題の解決を通して人類の生活の向上と充実を図る学問として「農学」を位置づけ、また、大学院生命農学研究科では、生命科学の基盤の拡充、生物機能・生物資源の高度利用、生命共生環境の創出・保全、および持続的生物生産と先端生命科学の技術開発を通して環境に調和した人類の発展を目指す総合的な学問分野として「生命農学」を位置づけ、教育・人材育成、研究および社会連携・社会貢献に力を注いでいます。また、リサーチ・ユニバーシティの一角として先導的な研究を実施し、我が国における幅広い農学の発展に貢献してきました。農学は、生命科学系の総合科学であり、また、実践的な実際科学として様々な分野から熱い眼差しが注がれています。いま、農学が解決すべき課題は、多岐にわたります。世界人口は80億人を超え、食料確保や安全な食の保証が大きな問題となっています。また、森林破壊、砂漠化、異常気象等が多くの地域で発生していますが、自然環境との生態的な調和を考慮して人間生活の質を向上させ、健康の維持と増進を図ることが重要です。これらいずれもが、地域特有の課題であると同時に国際的かつ普遍的課題、つまり、グローカルな課題であります。 名古屋大学が位置する東海地域は、世界を代表するものづくり産業の集積地であるばかりでなく農業や農林関連産業においても主要な生産地域であり、従来の枠組みにとらわれずに分野融合的な新分野を創造することができるポテンシャルを備えています。ライフサイエンスやバイオテクノロジー、データサイエンス、人工知能等を中心とした学術と科学技術が爆発的に発展しつつある時代を迎える中で、農学部・生命農学研究科は、創造的な研究活動によって真理を探究し、生命農学に関して、世界屈指の知的資産の形成・蓄積と継承に貢献すること、学生の自発性を重視する教育実践によって、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育て、国内外で指導的役割を果たしうる人材を養成することを研究と教育の目標としています。 今後は、大学が地域創生に貢献するとともに、地域の発展を取り込んで大学も教育や研究をはじめとする機能を飛躍的に強化させていくことが、強く望まれています。このような観点に立ち、名古屋大学と岐阜大学高精度で微細な細胞を単離するレーザーマイクロダイセクションの前にて経歴1990年 3月名古屋大学農学部農芸化学科卒業1992年 3月名古屋大学大学院農学研究科博士課程前期課程修了1995年 3月東京大学大学院農学系研究科博士課程修了1995年 12月東京大学農学部助手1996年 4月東京大学大学院農学生命科学研究科助手2003年 3月東京大学大学院農学生命科学研究科助教授2007年 4月東京大学大学院農学生命科学研究科准教授2010年 4月名古屋大学大学院生命農学研究科教授2015年 4月名古屋大学生物機能開発利用研究センター長2023年 4月名古屋大学大学院生命農学研究科長・農学部長とは、東海という広がりをもった地域を視野において、大学の役割・機能を一層強化するための一体的な経営、つまり、一法人複数大学制度による「東海国立大学機構」を2020年4月に創設しました。農学部・生命農学研究科は、当機構の中で大きな役割を担うことが期待されています。また、国際的な学術連携と教育交流を通して国際化を進め、世界とりわけアジア諸国との交流の拠点となることを目指しています。とくに、留学生の長短期受け入れ、グローバル30、ジョイントディグリープログラム、アジアサテライトキャンパス、卓越大学院プログラム等の国際化事業に積極的に参画しています。農学部・生命農学研究科では、次世代の人材育成に向けて、幅広い基礎科学の知識と深い専門性を体系的に学べるような教育プログラムを実施しています。高い志を持った国内外の若い人が集い、互いに多くを学び、新しい農学を創造するグローカルな人材となることを期待しています。名古屋大学大学院生命農学研究科長・農学部長中園幹生02名古屋大学農学部案内2025MESSAGE名古屋から発信される新しい農学
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