名古屋大学 大学案内 2025
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Researchers at Nagoya iversityUn「量子情報科学の理論的基礎を発展させるとともに、科学者を目指す人々の知的好奇心を育んでいきたい。」量子論が情報処理に課す究極の限界を明らかにするResearcherGUIDE TO NAGOYA UNIVERSITY 202508量子物理学の長年の未解決問題を解決 専門は「量子情報理論」です。量子情報技術という新たな分野の背後にある数学的理論に特化していますが、これは、量子論や統計力学全般の数学的、概念的、哲学的基礎にもつながっています。現在、とくに興味を持っているのは量子測定の理論です。量子的な粒子とその性質を観察・研究することの限界を理解したいと思っています。 量子情報理論は1970年代の研究に端を発し、1990年代から今日にかけて着実に発展した結果、情報理論から実際の量子通信に至るまで幅広い問題を解決してきました。20年前にはサイエンス・フィクションだと思われていたアイデアが、実用化されるのは確かにエキサイティングなことです。しかし、私が量子論の基礎を研究することに魅力を感じる最大の理由は、量子論が常に過去の知識に挑戦し続ける研究であるということです。 2012年、私は「半量子非局所ゲーム」の枠組みを構築することに成功。数理統計学と情報理論の考え方を用いて、量子物理学の基礎における長年の未解決問題を解決したことが評価され、2018年、国際量子構造協会より学術賞を受賞しました。 また、10年以上前、共著として「量子時間相関器」のアイデアを提案しました。この頃、時期尚早とされたBUSCEMI Francesco大学院情報学研究科 数理情報学専攻数理情報モデル論 教授PROFILE専門は量子情報理論。PhD (Physics) ( 2006年2月 イタリア・パヴィア大学 ) 。量子通信レート、量子暗号、量子測定、量子エンタングルメント、量子確率過程、量子熱力学、量子基礎について成果を上げている。2018年、International Quantum Structures Association(国際量子構造協会)においてBirkhoff-von Neumann Prize受賞。であろうアイデアをついに実現し、その範囲を広げ、2023年に共著「Virtual quantum broadcasting」を発表。量子論において時間相関を完全に諦める必要はないという重要な発見をしました。以前は "立ち入り禁止 "とされていた量子論の分野に踏み込むことを正当化できるだけの数学的・概念的証拠が見つかったようです。研究分野の概念的理解に向けて 研究活動では今後、量子計測理論の理解をさらに深め、量子情報処理への応用を目指します。具体的には、高度な計測技術の開発や、計測の不確かさが量子コンピューティングや通信プロトコルに与える影響の研究など、量子計測がもたらす課題への新たなアプローチを模索していく予定です。さらに、学生や研究者が量子論の概念的理解を深められるような教育リソースの開発にも貢献したいと考えています。複雑な概念を解明し、積極的な探求を促すことで、次世代の科学者に量子情報科学の最前線を探求する意欲を与えることができます。 目標は、量子情報科学の理論的基礎を発展させ、学際的な協力関係を築き、科学者を目指す人々の知的好奇心を育むこと。将来、量子情報理論のより多くの研究者が、未開拓の道を歩むことに関わってくれることを心から願っています。ブシェーミ・フランチェスコ02

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