名古屋大学 農学部案内 2026
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毎年6月におこなわれる、東郷フィールドでの田植え作業名古屋大学農学部案内 20262020年、名古屋大学大学院生命農学研究科生命技術科学専攻博士後期課程修了、国立遺伝学研究所研究員を経て、2022年、名古屋大学大学院生命農学研究科助教分子生物学実験により遺伝子型を判定する1996年、名古屋大学大学院農学研究科畜産学博士後期課程中退、日本学術振興会特別研究員、名古屋大学大学院生命農学研究科助手、同准教授等を経て、2008年、名古屋大学大学院生命農学研究科教授、2008年〜2011年、鳥類バイオサイエンス研究センターセンター長、2013年、高等研究院トランスフォーマティブ生命分子科学研究所教授マウスの活動リズムを調べるウズラの光周反応を観察する動 物統 合生理学吉 村 崇 教授 博士( 農学)植 物遺 伝育種学縣 步 美 助教 博士( 農学) 私たちの研究グループでは、イネをメインとして植物の形づくりを支える遺伝基盤を解明し、作物育種への応用を目指しています。穀粒を利用する作物において、穂の形は収量に直結する重要な形質です。イネとその野生種が示す穂 形態の多様性を利用して、多様な形が生み出される仕組みの理解と制御に取り組んでいます。 研究室には、食料・環境問題に関心を持ち、作物ゲノム研究を通じた社会課題解決に意欲的な学生が多く在籍しています。植物の生命現象を遺伝子・分子レベルで理解し、基礎研究の成果を作物育種に応用することに興味を持つ学生や、東郷フィールドの水田圃場を活用した大規模フィールド実験で、実際に植物の生育・形態を観察し研究に活かすことに魅力を感じる学生が集まっています。また、分子生物学的手法と形態学的解析を組み合わせた研究アプローチに関心のある学生も歓迎しています。 現在、食糧安全保障上のリスクが顕 在化する中、世 界人口の半分以上を養う重要な穀 物であるイネの安定生産を実現する基 盤技術の構築が求められています。今後は、野生遺伝資源由来の未利用有用遺伝子を単離して、理想的な穂の形をデザインし、環 境変動に強く高収量が期待できるイネの作出に貢献することを目指しています。これにより、持続可能な農業と食料安定供給を通じて将来の食料問題解決に貢献したいと考えています。 自然界の動物は、冬眠や渡り、毛の生え変わりなど、季節の変化にみごとに対応した正確な生体リズムを刻んでいます。アリストテレスもこの変化に気づいていましたが、日照時間(日長)の変化との関係が報告されたのは1920年。以来、さまざまな動植物の日長の変化に応じた生理機能の変化(光周性)の研究が進むようになりました。 しかし光周性のメカニズムが遺伝子レベルで明らかにされたのはごく最近のことです。とくに私たちの研究室がウズラやマウスを研究モデルとして光周性を制御する遺伝子を世界で初めて特定してからは、動物が視覚を司る光受容器とは別の新規な光受容器で光を感じ取り脳に春を告げるホルモン合成を指示していることが明らかになってきました。光周性を制御する遺伝子がわかったので、日長の違いをどう認識しているのかを遺伝子レベルで明らかにする研究をさらに進めています。 ニワトリ、ウズラは牛や豚に比べて少ない□で短期間に成長し、宗教的な禁忌もないので、私たちの研究成果は世界の食糧問題の解決に貢献できます。さらに季節性感情障害という人の病気にも貢献することが期待され、その応用の世界が広がりつつあります。鳥類、哺乳類の光周性を制御する遺伝子を世界で初めて発見。その瞬間に立ち会えた時の興奮は、研究者だけに与えられた特権かもしれません。植物の多様な形が生み出される仕 組みを理解し制御することで、作物の生産性向上に貢献します。12

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