※日本学術振興会育志賞大学院における学業成績が優秀であり、豊かな人間性を備え、意欲的かつ主体的に勉学及び研究活動に取り組んでいる大学院博士後期課程在学者で、当該大学長または所 属する学会長から推薦された者を対象に受賞者が決定されます。日本学術振興会より、毎年度、全国で16名程度に賞が授与されます。※名古屋大学学術奨励賞名古屋大学大学院博士後期課程に在学する学生で、人物・研究水準ともに優秀、かつ、研究科長及び指導教員から推薦のあった者を対象に受賞者が決定されます。名古屋 大学より、毎年度、学内で10名以内に賞が授与されます。(令和5年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 肺は酸素の取り込みを担う重要な組織であり、呼吸機能が低下することは私たちの健康に重大な影響を及ぼします。肺線維症という疾患は、肺組織の柔軟性が失われる難治性の疾患です。また、アフターコロナの現代において、肺線維症を発症する人が増加するとも言われています。肺線維症においては、私たちの体の中で重要な機能を持つ、とある酵素が悪い働きをしていることが分かっています。私はこの酵素がどのように肺線維症の形成に関わるかについて、肺線維症モデルマウスや、ごく小さな分子の重さを測定できる質量分析という技術を利用して研究を進めてきました。このような研究から、新しい肺線維症治療薬の創出に貢献したいと考えています。 私は農学部応用生命科学科から創薬科学研究科に進みました。学部時代に幅広い分野のハイレベルな講義や実験実習を経験したからこそ、自分がやりたいことを見つけることができ、興味のある研究に打ち込むことができました。名古屋大学の大学院では、自分が専攻する分野だけではなく、異なる分野の知識を得る機会や、分野融合研究を遂行する風土が整っています。充実した学習・研究環境が整った名古屋大学で、皆さんのやりたいことがきっと見つかります。(令和 4 年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 私たちの身の回りの物質は「どのような原子や分子が、どのように並び、どのように相互作用するか」によってその性質が決まります。そのため、物質・材料中の原子の並び(結晶構造)を調べることで、物質の特性(物性)がどのようなメカニズムで現れているのか、どういった変化を加えれば材料特性が向上するのかを明らかにできます。結晶構造を調べる方法は多数存在しますが、私はX線を試料に照射した時に生じる回折現象を活用して結晶構造を明らかにしています。これまでに、半世紀以上未解明だったとある物質の構造解明に成功したり、新たな物質群である無機柔粘性結晶を発見したりなど、様々な物質について結晶構造を明らかにすることで物性の起源解明を行ってきています。 研究を行うためには様々なものが必要になります。私の場合はX線が使用できる環境が必要ですが、名古屋大学においては学内のX線装置の他に、愛知県内にあり名古屋大学との連携が盛んなあいちシンクロトロン光センター、国内にあり世界トップの大型施設SPring-8といったX線施設の利用をしています。X線に限らず名古屋大学は多数の施設、装置が利用でき、非常によく整備された研究環境が整っています。この優れた環境で皆さんと一緒に研究できることを楽しみにしています。(第 15 回(令和 6 年度)日本学術振興会有志賞受賞・ 令和 6 年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 概日時計は地球上の多くの生物がもつ、約1日を計時するシステムです。私の研究する植物は、花を咲かせる時期や代謝などの重要な生理現象が概日時計によって制御されており、農業的に価値のある形質を制御する重要な仕組みです。概日時計は複数の生化学反応を組み合わせて約1日を計時します。一般に生化学反応は温度が高くなるほど反応速度が大きくなるものの、概日時計は温度変動にほとんど左右されません。この性質は「周期の温度補償性」と呼ばれ、一般的な化学反応から逸脱した興味深い性質です。しかし、そのメカニズムはほとんどわかっていませんでした。私は温度補償性を失い、高温で時計の針が速く回ってしまう植物の解析から、高温では時計の針が速く回ることを止めるブレーキタンパク質を発見しました。また、低温では必要のないブレーキを積極的に分解する仕組みも発見し、ブレーキの温度依存的な量の変化が温度補償性を成立させる上で重要であることを報告しました。名古屋大学には植物だけでなく、哺乳類や魚類の概日時計研究者も在籍しており、様々な生物の概日時計について学びつつ、議論を深めることができます。また、植物研究も盛んで、研究室間での交流もあるため、非常に充実した研究生活を送ることができました。(令和 6 年度名古屋大学学術奨励賞受賞) 街の書店を覗くと、「自分を変える」と銘打った自己啓発本が所狭しと並んでいます。このことが象徴するように、現代社会に生きる多くの人々が「自分を変えたい」と願っています。実際、性格や能力についての自己認識や日々の行動は、幸福感や社会的な成功と深く関わっていることが、心理学の研究から明らかになっています。 しかし、自己啓発本に書かれている方法の多くには、科学的な根拠が不足しています。だからこそ、「人はどうすれば変われるのか」を科学的に明らかにすることは、人々の幸せや可能性を広げるうえでとても重要だと私は考えています。 私の専門である実験社会心理学では、「他人にこう見られたい」と思ってふるまううちに、そのイメージ通りに自分の認識や行動が変化していく「自己呈示の内在化」と呼ばれる現象が知られています。私はこの現象がなぜ、どのように起こるのかを研究しています。 心理学の研究対象は人間そのものであり、皆さんの身近な疑問や悩みにも深く関係しています。こうしたテーマに科学的に取り組むためには、適切なトレーニングと実験室などの環境が必要です。名古屋大学大学院教育発達科学研究科には、幅広いテーマで指導してくださる先生方に加え、研究室間の垣根も低く、学びたいテーマに応じて柔軟に研究を進めることができる環境と実験室等の設備が整っています。生命農学研究科 応用生命科学専攻博士後期課程修了教育発達科学研究科心理発達科学専攻博士後期課程修了前田 明里 さん出身校: 名古屋市立向陽高等学校 上田 皐介 さん出身校: 北海道札幌東高等学校創薬科学研究科 基盤創薬学専攻博士後期課程修了工学研究科応用物理学専攻博士後期課程修了竹内 大修 さん出身校: 愛知県立明和高等学校 小島 慶太 さん出身校: 新潟県立 直江津中等教育学校GUIDE TO NAGOYA UNIVERSITY 202670名 大 生 の 研 究 発 表
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