新潟大学 医学部医学科 案内 2023
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 「あなたはどんな医師になりたいですか。」 医学科志望者には必ずどこかで投げかけられる質問です。現時点でこの質問に対して明確なストーリーに基づく答えを持っている方もいれば、そうでない方もいるでしょう。医学科で6年を過ごすうちにその答えはきっと大きく変化するでしょう。そして、恐らくその変化に6年間で最も大きく寄与すると思われるカリキュラムが、臨床実習です。 4年生のCBT・OSCEを終えたあとに始まる臨床実習。正式には「診療参加型臨床実習」と呼ばれ、その名の通り学生が病院に赴いて行われます。臨床現場に出て”医療スタッフ”として患者さんに接する、人生で初めての機会です。将来(卒業後)どの診療科や学問分野を志すのかを決断し、何を目標に医師になるのかを決意する大きな助けになります。 臨床実習は、患者さんとその家族を中心としたチーム医療の枠組みに参加しながら、医学的知識および技能の習得に加えて、チームの中で求められる役割を円滑かつ効果的に果たすための態度を身につけるためのものです。学生はCBT・OSCEの合格により”Student Doctor”として認定され、一定の医療行為は指導医の先生の監督下で行うことができます。学生はしばしば患者さんに対する診察(問診や聴診、触診など)を行って、その内容をカルテに記録します。また過去に行われた診療の内容などをカルテで参照し、患者さんの医学的な問題点やそれに対する対処方法などを考察し先生方に発表する機会などもあります。また、外科の先生とともに手術室に入り、間近で(術者の先生と全く同じ視点で)手術を見学することもあります。 臨床実習での学びが3・4年次の臨床医学講義での学びと大きく異なる点は、学生の主体性です。臨床医学の講義では、診療科別・疾患別に整理された知識を机上でインプットします。身体がどのように異常をきたし、それをどのように治療できるのかを学ぶことは言うまでもなく重要なことです。しかし実際の患者さんの症状は、講義で学んだように整理されて眼前に現れてはくれません。多くの病態が複雑に絡んで常に変化しており、病態によって対応するべき緊急度や対応に必要な医療資源も異なります。さらに実際の診療には患者さんの社会・経済的状況が深く関わります。医療保険を始めとする社会保障の仕組みを「公衆衛生学」の講義で習った後の段階として、目の前の患者さんはどんな社会的支援を必要としており、また高齢化の進む国・地域の中でどの程度のリソースが利用可能なのか、患者さんご本人やご家族の意向とその変化も踏まえて主体的に考察するのが臨床実習です。 臨床実習を行う学生は「大学生」ではあるものの、白衣を着て患者さんの診察をさせていただく際には患者さんには「医療従事者」として扱われます。診察をさせていただくと「ありがとう」と言っていただけることもあります。これは学生を喜ばせる言葉であると同時に、大きな信頼と重い責任を感じさせる言葉でもあります。 「どんな医師になりたいか。」この質問に対する答えは、このような環境で過ごす中でおのずと醸成されてゆきます。皆様がこのチャレンジングで楽しい環境に飛び込んでくることをお待ちしています。10新潟から始まる医学への道2010年、米国 Educational Commis-sion for Foreign Medical Graduates(ECFMG)が「2023年以後のECFMG受験申請は国際的な基準で分野別評価を受けた医学部の出身者に限る」ことを発表しました。医学教育の国際化における「2023年問題」がここに始まりました(注:COVID-19パンデミックにより2024年に延期)。これに対応するために、日本医学教育評価機構(Japan Accred-itation Council for Medical Education:JACME)が発足、世界医学教育連盟(World Federation for Medi-cal Education:WFME)のグローバルスタンダードに準拠した基準で日本でも医学教育の分野別評価を行うことになりました。新潟大学は、2012年度の文部科学省大学改革推進委託事業(GP)で採択された「国際基準に対応した医学教育認証制度の確立」のメンバーとなりました。2013年には、日本の80医学部・医科大学に先駆けて「日本初」の医学教育分野別評価トライアルを受審し、2017年に日本医学教育評価機構が正式に世界医学教育連盟から認証されたことに伴い、新潟大学医学部の医学教育も正式に国際基準を満たすものと認定されています。 このような流れを受けて、新潟大学ではECFMG certificateの取得を目指し、USMLE(United States Medical Li-censing Examination:米国医師国家試験)を受験し、合格する医学生が多く存在します。2020年度(単年度)には3名の医学生がUSMLEに合格しており、最近数年の合格者は14名に上ります。国内トップクラスです。新潟大学にはグローバルに活動できる医師を養成する土壌があります。学生からの一言臨床実習で培うもの酒 巻 摩 周USMLE(米国医師国家試験)への挑戦と高い実績

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