新潟大学 医学部医学科 案内 2023
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 「医学部ではたくさん勉強しなければならない」 ということに頷かれる方は多いと思います。一方で「医学部は覚えることが多く大変」 というのもまた多くの方が納得されるイメージです。では、そんな大変な思いをしてなぜ医学部で勉強するのでしょうか?  「医師として活躍するため」「将来の患者さんのため」というのも確かに正しいです。しかし、医学という学問領域が古代から人を惹きつけてきたのは、やはり医学それ自体の面白さ、という要素が挙げられるのだと思います。整形外科学教室2代目教授の天児民和先生(1905〜1995)も 「学ぶことは楽しいことだ。もし苦しいと思うときは何かが間違っている」という言葉をのこされたと聞いています。 とはいえ、どうしても暗記しなければならない事項も多いですし、試験や実習に追われるときも少なからずあります。特に専門課程に入って暫くは、このままやっていけるのか不安に駆られることも多いです。しかし、敢えて医学の面白さをここで強調させていただいたのは、本学は知識を詰め込むだけではなく「疑問に思ったことを追求する姿勢」を養うための環境があるということをお伝えしたいからです。 例えば、3年生の「医学研究実習」では希望の研究室で約2ヶ月間研究活動に取り組みます。学外の教室も含め選択できる分野の幅が広いことが特徴です。私は脳研究所病理学分野で神経病理学を学びました。神経病理学とは、神経疾患で亡くなられた患者さんの剖検脳を主に顕微鏡を使って丹念に調べ、体の中で何が起こっていたのかを解き明かそうとする分野です。実習がはじまって最初は、教科書に書いてある所見を顕微鏡で探そうとしました。しかし、毎日標本を見ていると、つけられた病名はその患者さんを構成するごくごく一部にすぎないこと、何でも書いてあると思っていた教科書も実はエッセンスのかたまりであることに気付かされました。基本的な知識を習得することはもちろん必要ですが、「医学研究実習」を通して研究手法だけでなく病に向き合う姿勢を教えていただきました。 「医学研究実習」が終わると、臓器別講義が始まります。血液系、呼吸器系、消化器系…のようにブロックに分けられ、例えば内科・外科の先生はこの疾患をどう診断し治療するか、X線やCT・MRIでどのように見つけるのか、顕微鏡ではどのような像が見えるのかなどを、各分野の先生から解説いただきます。また臓器別講義は、人体や病気のメカニズムに未だ謎が多く残されているのだと改めて実感する機会でもあります。最終的には4年生の後半で共用試験(CBT, OSCE)を受験し、知識や技能を再確認した上で臨床実習に臨みます。 3、4年生のカリキュラムを中心に、新潟大学医学部での学びについて紹介させていただきました。今まさに全力を尽くしている受験生・高校生の方に私からアドバイスできることなどございませんが、最後に本学の礎を築いた一人である平澤興先生(1900〜1989)の言葉をご紹介します。 「目をいからしたねじりハチマキのやり方などは、決して最善の努力とは言えません。最善の努力というのは、あらゆる条件を考えて、いつまで続けても過労が出ず、努力の中に笑いがあるようなものだ」 私がこのような境地に至るには程遠いと感じる日々ですが、皆様が最善の努力をされ、笑顔で大学の門をくぐられることを、心から願っています。8新潟から始まる医学への道 実際の医療現場で患者さんに接する(臨床実習)前に、基礎医学と臨床医学の基本的知識を修得しているかどうかを評価する試験です。コンピュータを用いて全国で統一された試験を行います。CBTとOSCEの両方に合格すると、臨床実習に進むことが許可されます。 医学生が患者さんに接する前に、患者さんと接する態度と診察時の基本的な知識・技能を身につけたかどうかを評価する試験を客観的臨床能力試験(OSCE)といいます。これにより医師と患者さんとの良好な人間関係を構築し、全人的医療を行える良い医師となる学生にふさわしいかどうか評価します。外部の医学部教員が新潟大学の教員と一緒になって厳正な評価を行います。シミュレーターを用いた心臓カテーテル実習の様子(臨床実習)。(コンピュータ医学試験)(客観的臨床能力試験)学生からの一言病から学ぶ神 成 朝 日CBTとは‥OSCEとは‥

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