「想像力と創造力」で切り抜けてきた人々の逞しさを糧に困難な状況をチーム力で乗り越えていく重要性を学びました独立行政法人国立病院機構 九州医療センター助産師 安武 陽子43大分県立看護科学大学 地域看護学研究室教授 甲斐 優子私は福岡市にある九州医療センターのNICU(新生児特定集中治療室)で助産師として働いており、早産児をはじめハイリスクな状態にある新生児のケアを行っています。また、産後すぐに我が子と離ればなれになる母親の悲しみや葛藤を受け止め、愛着形成促進のためのケアに努めています。現在、当院は新型コロナウイルス感染症対策の一環として、家族の面会を禁止しています。しかし、NICUでは、両親は赤ちゃんにとって最良の状態をつくるための重要なパートナーであるという考えから、良好な愛着形成へ向けた親子の触れ合いは必要不可欠であり、時間と人数制限を設けるかたちで面会を継続しています。コロナ禍以前は24時間面会可能とし、子育てのサポート体制を強化していくために、祖父母面会や窓越しでの兄弟面会も認めるなど、退院後も安心して母子が過ごせる環境を整えるための支援を行っていました。感染拡大を防ぐこととリスクを抱えて生まれてきた赤ちゃんとそのご家族にとって最適なことは何かとスタッフも葛藤を抱え、悩むことがありました。効果的な支援について検討し、結果として多少の制限はありますが、面会を継続することとしました。 感染拡大のリスクがある中で、この体制を維持できているのは医師や看護スタッフ、感染対策チームなど多職種間の連携があってこそだと思います。様々な課題に対してチームで話し合いを繰り返し、最善策を見つけ出していく必要がありました。コロナを越えて、困難な状況をチーム力で乗り越えていくことの重要性を、多職種間の連携を通して学びました。そこでは、常に連携を図るための調整力が求められます。大学院では様々な分野で活躍されている先生方や院生との交流から得られる学びは大きいです。先の調整力も相手を知り、理解することで身についていくものだと思います。大学院での経験を今後に活かせるように共に頑張りましょう。Campus Guide 20242019年末頃から新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、すべての人々の生活に大きな影響を与えました。未知の病への不安感や様々な制限による閉塞感が続き、医療か経済かと問われることもありました。丸三年を迎えた今、感染症法上の2類相当から5類への移行が5月に予定され、生活上の制限も緩和の方向に舵が切られ、その日常のありようが少しずつ示されてきています。私は、令和4年春に保健所保健師から大学教員となった者として、コロナ禍の学生を取り巻く環境について考えたことを記します。まず、学習環境への影響としては、感染者数の急増によって、看護教育の要である臨地実習が中止となり学内実習に変更となること、対面授業からオンライン授業への変更となることが挙げられます。ここ数年の経験から複数の対応策がたてられ、有用な学習環境となるよう調整していますが、今後もその状況は流動的です。臨地指導者や学生の意見をもとに、よりよい学習環境を目指し、ICTの活用や教授方法の工夫改善が求められていると感じます。 また、学生に対しては、科学的根拠をもとに感染を拡げない行動がとれるよう、様々な場面を捉えて繰り返し意識づけることが重要です。そして、命に関わる感染症であることも忘れてはなりません。一方、制限のあったサークル活動やアルバイト、大学祭などは、学生同士や地域の方々との交流の場として、また、経済活動として再開し、豊かな学生生活が育まれるようにしたいものです。この災害とも思える感染症に対峙する日々から「人とつながることの重要性」を学ぶとともに、「想像力と創造力」で切り抜けてきた人々の逞しさを糧にして、芯が強い看護職を育てたいと思います。新型コロナウイルス感染症拡大という未曽有の災禍に、看護師・保健師・助産師として最前線で対峙した本学卒業生と、学生の学びを支え続けた教員からのメッセージをお届けします。
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