大阪大学 GUIDEBOOK 2021
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 なかでも、骨や軟骨に重要な転写因子に注目しています。転写因子とは、遺伝子が動くか動かないかを決めるもの。その組み合わせによって細胞の種類や働きが決まるのです。「骨、軟骨がどうやってできるのか、またどのようにして働くかを決めるものは、それぞれ別の転写因子です。骨の元となる間葉系幹細胞から骨の細胞、軟骨の細胞へと分化するときにどんな転写因子が働くのか、そしてどのようにそれが制御されているのかについて研究しています」。 骨や軟骨ができるメカニズムを解明し、骨および軟骨疾患の治療法の開発につなげたいと考える波多准教授。「高齢化が進むなか、軟骨や骨に問題を抱える患者さんは増えていきます。例えば、歯周病で溶けてなくなってしまった患者さんの骨を元に戻す薬、また歯学の領域ではありませんが、すり減ったひざの軟骨を元に戻す薬の開発などにも研究成果を応用したいんです」。 研究に進んだきっかけは、「実家が歯科医院で、父のあとを継ぐ予定で歯学部に入学しました。卒業後は臨床に携わっていたのですが、もう少し勉強がしたくて大学院に入った」こと。当時は、歯だけでなく骨にも詳しい「スペシャルな歯科医」を目指していました。しかし、「研究が面白くて、ついのめり込み、どんどん歯科医から離れていきました。両親は今も実家の歯科医院を継いでほしいと思っています」と笑います。キーワードは「転写因子」大学院で研究にのめり込む蛍光ラベリングにより軟骨細胞だけが光るマウスいつか自分の研究がベースとなって開発された薬が市場に出回り、使ってもらえることが夢波多准教授にとって面白いというか楽しいですね。それしか思いつかない。研究は楽しくやらないといけない。患者さんのことを最優先する治療と違って、自由にできるのも基礎研究のいいところです。研究者の仕事の進め方は、映画監督がストーリー・構成・キャストなどを限られた予算で考える作品作りに似ていると感じる。もちろん思い通りにいかないこともあります。10回のうち9回うまくいかなくても、1回があるからやっぱり楽しい。とは研究大阪大学の最先端の研究をWebでもご覧いただけます。特集教育システムキャンパスライフインフォメーション9大阪大学の研究

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