大阪大学 GUIDEBOOK 2021
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ば、経済の状況が悪くなったからプロジェクトを中止するとか、逆に状況が良いので事業拡大するとか、ライバルが入ってきたら提携するとか、事業譲渡するとか、いろいろな可能性があり得る。そこで中止、拡大、提携など、状況変化に対応するさまざまなオプションを考えたうえでプロジェクトの価値を評価しないといけません」。 単に将来の収益とコストを試算し、現在の価値に割り引くだけでなく、将来、状況に応じてどんなオプションを行使すれば企業として最適な行動になるかを考える。このように、NPV法で算出したプロジェクトの価値に、ダイナミック(動学的)な要素を加える方法が「リアル・オプション法」なのです。 リアル・オプション法は「将来の不確実性をある種の確率過程で表現し、数式モデルを構築したうえで、確率的な変化がどのようにプロジェクト価値、ひいては企業価値に跳ね返ってくるかを理論的に示す。つまり、確率過程がどういう状況になったら事業拡大するとか、どういう状況になったら中止とか、そういう視点を取り入れたモデルです」。リアル・オプション法を使うと、企業は状況変化に応じてダイナミックに最適行動をとることができるため、プロジェクト価値が上がります。 「最近では、企業の株価がいかなる理由でこの価格になっているか、企業の本質的価値をリアル・オプション法から分析することに大いに興味をもっています」。 M&Aなどでは、買収する側の企業は相手の状況について情報や知識が少なく、買収が自社の利益に貢献するかが評価しづらいことが多いもの。一方、買収される側は自らの状況をよくわかっており、ここには情報の非対称性があります。 一般に、企業は正直な行動をとると考えられますが、実際には自社の利益を最大化するよう、法律に触れない範囲で情報を隠すことがあります。公開・非公開を自分で決めるという、ある種ずる賢い行動も取るのです。 西原准教授は、そのなかで問題がどう解決されるかについても分析しています。「経済の理論モデルに情報という要素が入ると、情報を持っているほうはそれを利用しようとし、持っていないほうは騙されないようにするという、ある意味すごくいやらしいが、人間らしさのあるモデルになります。情報を持つ人と持たざる人のせめぎ合いが数式的に分析されていくのは楽しいですね」。企業の本質的価値を探りたい情報の非対称性も、数式に織り込む研究室のドアを開けると、最近掲載された論文のイントロダクション部分がずらりと並ぶ西原准教授らの理論に基づく、企業の倒産までの株価変動モデル(縦軸:株価[時価総額]、横軸:年数)変数により、経済状況を反映できる。大阪大学賞受賞記念の盾西原准教授にとって天職。一番向いていること。自分が社会で価値を生み出せること。それ以外の仕事では、自分はあまり価値を提供できると思わないのです。とは研究大阪大学の最先端の研究をWebでもご覧いただけます。特集教育システムインフォメーション5大阪大学の研究キャンパスライフ

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