大阪大学 GUIDEBOOK 2021
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志賀 向子(しが さきこ) 1993年岡山大学自然科学研究科修了、博士(理学)。同年大阪市立大学助手、98年同大学講師、2001年准教授、10年教授を経て、16年より現職。PROFILE 志賀教授が立ち上げた「比較神経生物学研究室」。その名称には、生命科学の一分野である神経生物学について、さまざまな生物の比較を通じて、多様性と共通性を探りたいという思いが込められています。「生物は地球上のいろいろな場所で、多種多様な生き方をしています。彼らの進化の多様性を見るのが面白いと思っています」。 研究の中心は生物にとっての「時間」、つまり光周性※1や季節性を司っている神経系。「植物に、短日植物と長日植物があることはよく知られていますが、動物にも光周性をもつものは多く、昆虫などの無脊椎動物だけでなく、ヤギ、ハムスターの仲間、鳥の仲間など、光周性が繁殖リズムに影響を与えているものは多くいます。このような行動の変化を司っているのは日照時間(日長)。日長の変化は毎年同じように訪れるので、季節を予測するには非常に信頼のおける物理的な環境因子です。生物の体内に概日時計※2があることは解明されていますが、日長をもとにどうやって季節を読んでいるのかはまだ解明されていません」。※1 光周性:生物が日照時間の変化に対して反応を示す性質 ※2 概日時計:毎日約24時間の周期で時を刻む生物の体内時計 志賀教授は、自然選択のなかで形成されてきた動物の行動や生理を神経系の仕組みから研究しています。興味の中心は「脳や神経系がどのようなメカニズムで時間を読み取っているのか」ということ。志賀教授はこれまでに、秋から休眠する性質をもつ昆虫・ルリキンバエの脳内で、休眠調節を司る神経分泌細胞を突き止めることに成功しています。生物の比較を通じて多様性・共通性を探る昆虫の行動を脳の仕組みから解き明かす~生物の季節性、時間計測の謎に迫る~理学研究科 教授 志賀 向子6大阪大学の研究 ~知を拓く人、新たな探求と挑戦~

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