大阪大学 GUIDEBOOK 2023
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 「ロボットも人間である」と言われたら、いまのあなたはすんなりと受け入れられるでしょうか?落語家の桂米朝さんや人気タレントのマツコ・デラックスさんなどと瓜二つのアンドロイド(人間酷似型ロボット)を製作し、メディアからも注目を集める石黒栄誉教授。本人の分身とも言えるアンドロイド「ジェミノイド」のほか、音声認識や身振り手振りで人間と自然な対話ができるロボット、認知症の高齢者などとのコミュニケーションを手助けするロボット、複雑な動きから神秘的な生命感を漂わせるロボットなど、未来の産業や暮らしの基盤と成り得る数々の革新的テクノロジーを生み続けています。「自らを『天才』と自負できない研究者は辞めたほうがいい」と鋭い言葉で自身を鼓舞するロボット学の第一人者は、研究を通じて「人間とは何か?」という哲学的な問いと向き合っています。石黒教授が問い続け、見えてきたものをうかがいました。2PROFILE石黒 浩(いしぐろ ひろし) 1991年大阪大学基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。京都大学情報学研究科助教授、大阪大学工学研究科教授を経て、2009年より現職。17年大阪大学栄誉教授。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)石黒浩特別研究所客員所長。科学技術振興機構・ムーンショット型研究開発事業・プロジェクトマネージャー。25年日本国際博覧会(大阪・関西万博)テーマ事業プロデューサー。〜技術がヒトを多様にし、不幸を一つひとつ消し去っていく〜人間とは何か 1990年代後半にロボット研究を始めたとき、目指したのは工場で働く産業用ロボットではなく、日常生活の場で働くロボットでした。そのためにはきちんと人間と関わりを持てる存在でなくてはなりません。ひとことで言えば「人間らしいロボット」です。 手がかりとして人間そっくりのアンドロイドを作り、姿かたちや振る舞いと人間らしさの関係を調べました。工学的なアプローチだけでなく、認知科学や心理学、脳科学の知見も必要となる前人未踏の道でした。「『人間を人間たらしめているものは、そもそも何なのか』。研究が進めば進むほど次々と根源的な疑問が浮かんでくる」。それが、自分そっくりのアンドロイドをインターネット経由で操作しているときの体験でした。基礎工学研究科 栄誉教授 石黒 浩大阪大学の研究 〜知を拓く人、新たな探求と挑戦〜アンドロイドに「わたし」をみる

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