富山県立大学 研究室ガイドブック2023 看護学部
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9Nursing Science and Practice認知症高齢者の看護倫理(*)に関する教育教材の開発9リポートリポート若手看護師の尊厳を重視したコミュニケーションの実態基礎看護学講座助教     岩崎 涼子基礎看護学講座助教     細田 恵莉奈認知症高齢者の看護では、倫理的ジレンマ(*)を抱えながらも対処方法を見出せない看護職がいます。そこで、学生の段階から倫理的感受性を高め行動できるようになることを目指し、ICT教材の開発に取り組んでいます。認知症高齢者の看護は、倫理的ジレンマを抱えやすい状況にあります。看護基礎教育では、当事者や家族に丁寧に向き合ったケアを実践する素地を作ることが課題となります。看護現場で生じている種々の事象が、倫理的問題であるか否かを考え説明する力、倫理的に行動しようとする力を養う必要があります。そのため、認知症高齢者と家族の看護に関して、臨床看護師が経験しているリアルな事例を題材にした教材の開発を目指しています。看護の対象となる人々の能力や意思を尊重した看護を実践するためには、高い看護技術が求められます。特にコミュニケーション技術は多様な個別性に対応する必要があり、技術力を高める教育方法を探究しています。認知症高齢者の中には、コミュケーションエラー(*)により尊厳(*)が守られた生活を送れない場合があります。   そこで認知症高齢者と生活を共にしている家族や医療専門職者のコミュニケーションの実態を知ることが重要と考え、〝尊厳〟をテーマに質問紙調査やインタビュー調査に取り組んでいます。             分析ではポジティブな情報も重視し、包括的コミュニケーション技法であるユマニチュードⓇを取り入れた教育方法を模索しています。A総合病院(700床)に勤務する看護師734人を対象に、認知症高齢者の看護に関する無記名自記式質問紙調査を実施しました。右表は、倫理的ジレンマに関するデータの一部です。身体抑制や心理・精神的拘束は上位にあり、高齢者の尊厳を守る看護を目指す看護師を苦しめている現状がわかります。総合病院に勤務する経験1〜3年目の若手看護師を対象に、コミュニケーションの図りにくい患者の体位変換の援助における尊厳を重視した『話す・触れる』技術に関して、日頃どの程度「意識しているか」・「実施しているか」について自己評価してもらったデータの一部です。『触れる』技術より『話す』技術を意識し実施している看護師が多く、『触れる』技術では、患者の身体に常に触れ、筋緊張の程度を把握することへの意識が低いため、これらの教育課題に対する教育方法を検討しています。左図は、看護師が実践している倫理的ジレンマへの対応方法に関するデータです。ジレンマを感じながらも、「そのままにした」が8%も存在しており、専門職としての責務を果たすための教育を強化する必要性が示されました。10Nursing Science and Practice看護コミュニケーション技術の教育方法の検討研究分野基礎看護学:認知症看護、看護倫理、教材開発研究内容私の研究のポイント研究分野基礎看護学:看護技術・教育方法・認知症看護研究内容私の研究のポイント

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