富山県立大学 研究室ガイドブック2024 工学部
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  24リポート環境工学講座教授 川上 智規発展途上国では水道の普及率が低く、飲料水として井戸水が利用されることが多いのですが、地域によっては有害物質が含まれることがあります。例えば、スリランカでは高濃度のフッ素、バングラデシュではヒ素が含まれている場合があり、住民が健康被害を被っています。本研究では飲料水からフッ素やヒ素を除去する方法を開発しています。発展途上国では飲料水を井戸水に頼っている場合が多いのですが、必ずしも水質が良いわけではありません。フッ素やヒ素が含まれている場合があります。フッ素やヒ素の除去にはいくつかの方法がありますが、現地の状況に合わせた手法の開発が必要です。すなわち、安価であるということや、化学薬品を加えないということが重要です。この研究では、電解法を用いてフッ素やヒ素を除去することを提案しています。井戸水を電解し、井戸水にもともと含まれるマグネシウムを水酸化マグネシウムとして沈殿させ、その時にフッ素とヒ素を同時に除去することができます。右上の写真は高濃度のフッ素を含む井戸水を飲み続けたために斑状歯という、歯が黒くなる病気になったスリランカの子供です。右下の写真はバングラデシュでヒ素を含む井戸水を飲み続けたために発症した手のひらの角化症です。下の図はこの研究で用いる電解装置のフロー図です。右の写真はスリランカに設置したフッ素除去装置です。集落の住民がフッ素の除去処理をした水を汲みにきて利用しています。ヒ素も同じ電解法で除去することができます。バングラデシュではこれまでにも多くのヒ素除去装置が設置されていますが、薬品が必要なため、一度薬品が無くなると、その後装置を動かすことができず、今ではほとんどの装置が動いていません。電解法では薬品を使わないので継続的な処理が可能です。陽極槽と陰極槽とを隔膜で仕切り、電流を流すと陰極側でpHが上昇し、それに伴い水酸化マグネシウムが沈殿します。フッ素やヒ素は水酸化マグネシウムの沈殿と共に井戸水から除去されます。30Environmental and Civil Engineering発展途上国における飲料水の水質改善研究分野大気環境、水環境研究内容私の研究のポイント

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