富山県立大学 研究室ガイドブック2024 工学部
30/102

-?水の病原微生物汚染のイメージ環境調査の様子(左)とウイルス検出法開発の様子(右)(a)28リポートリポート環境工学講座准教授 端 昭彦環境工学講座講師 中澤 暦(c)都市水環境には、ノロウイルスを始めとした病原ウイルスが広く存在しています。水に由来するウイルス感染のリスクを適切に制御することを目的とし、その検査手法の開発や、存在状況の調査などを行っています。水中のウイルスによる感染症は、特に水処理技術の発達した先進国で問題になりやすいと考えられています。また、水処理過程や環境でのウイルスの動態に関する知識は不足しており、ウイルスによる感染リスクを制御するための環境・水質基準は設定されていません。特に現状では多量の水試料(例えば飲料水ならば10トン程度)を検査する手法を確立し、これを適用してくことが重要と考えられます。微量でも生物に影響を及ぼす、水銀。この水銀の環境中動態や環境リスクについて、水銀汚染のないバックグラウンド地域と水銀汚染のある小規模金採掘活動地域を対象として研究しています。水銀は、唯一常温で液体の金属です。水銀の大気への放出源のうち、人為的な発生源としては、石炭燃焼由来、小規模金採掘活動由来 (この2つで50 %以上を占める) です。いったん大気へ放出された水銀は地球上を半年から2年程度巡るため、発生源から遠くはなれた遠隔地でも、高濃度に沈着することがあります。遠隔地での水銀の場として、大気汚染物質が運ばれやすい自由対流圏や極域に着目して研究を行っています。また、水銀発生源の一つである、インドネシアの小規模金採掘活動地域で、環境媒体中水銀濃度の観測結果からヒトへの健康影響の有無について研究しています。インドネシアのパル市はパル湾の最奥に位置する人口34万の中部スラウェシ州の州都ですが (写真(a))、その後方山麓では小規模金採掘 (Artisanal Small-scale Gold mining; ASGM) 活動がかなり広範囲にわたって行われています。従事者は砕いた金鉱石と水と水銀を混ぜて(写真(b))、いくつかの工程を経たのち素金を得 (写真(c))、現金に換金しています。ASGM 活動現場 (写真(b)) とパル市内で大気中の水銀濃度を観測すると、どちらも高濃度であることが分かってきました。この研究では、電源がない場所で大気中水銀濃度を観測する方法 (パッシブサンプラー) の開発を行っています。多数の(b)地点にパッシブサンプラーを設置して濃度の水平分布を明らかにすることを目指しています。さらに、このようにして得られたフィールドデータから水銀を吸入することによる、ヒトへの健康リスク評価を行っています。2017年には水銀に関する水俣条約が発効されました。水銀の地球規模での水銀排出および水銀の挙動に関する知見の集積および対策は喫緊の課題となっています。 37Environmental and Civil Engineering水中の病原ウイルスによる健康リスク評価と制御38Environmental and Civil Engineering環境中水銀の動態とそのリスク研究分野健康関連微生物、水環境学研究内容私の研究のポイント研究分野環境科学 環境リスク学研究内容私の研究のポイント

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る