富山県立大学 研究室ガイドブック2024 工学部
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 77Liberal Arts and Sciences腎臓に有益な効果をもたらす運動条件の探索MICE及びHIIE は腎血流量を維持し、腎損傷を誘発しないことが確認されました。標高6,300mまでのシミュレーションができる装置ですが、私は標高2,500mで実施しています。検査方法(A)腎血行動態評価の実施超音波エコーを用いて、腎血行動態に対する運動の影響を検討します。(B)実際の測定画面Physiol Rep, 202454リポートリポートClin Exp Nephrol, 2018 2019准教授齊藤 陽子心電図や動脈血酸素飽和度をモニターしながら、テント内で自転車運動を行います。講師川上 翔太郎 心血管疾患の早期予測マーカーである血管内皮機能(血管拡張能力)は加齢により低下しますが、有酸素運動により改善します。しかし、女性ホルモンが欠乏する閉経後女性においてはその効果が立証されておらず、私は疑似高所(低酸素)の運動環境がそれを補填できるかどうか検討しています。女性ホルモンは心血管の保護や酸化ストレスの消去作用がありますが、閉経後にはその恩恵を受けることができなくなるために、心血管疾患をはじめとした種々の疾患リスクが高まります。こういった研究を通じて、できるだけ薬に頼らない改善手段の一つを提案できるようにという思いで研究に取り組んでいます。富山県は立山をはじめとする自然環境に恵まれています。この研究は実験室環境で実施していますが、将来的に自然高所での効果を立証できれば、富山県における地域資源の有効活用や健康産業への発展につながるのではないかと期待しています。腎臓病(CKD )患者にとって安全で効果的な運動条件は整備されていません。そこで、私は異なる運動条件(強度、継続時間、頻度、様式)下での運動が腎臓にどのような影響を与えるのかを研究しています。強度及び継続時間が腎臓に及ぼす影響を検討し、中強度の持続運動(MICE )が腎血流量を維持し、腎機能を障害しないという成果を得ました。さらに、高強度だが断続的な運動(HIIE )は腎血流量を維持し、腎損傷を誘発しないこと、その影響度はMICEと同程度であることが分かりました。異なる運動条件が腎臓に与える影響を検討することで、CKD患者への運動療法に様々な選択肢を提供できると考えています。(*)(*)(*)(*)疑似高所環境を作り出す低酸素テント血管内皮機能検査動脈硬化の早期進行リスク予測に有効な検査として知られており、血管拡張の程度を超音波画像診断装置で評価します。76Liberal Arts and Sciences低酸素環境下での有酸素運動は閉経後女性の血管内皮機能 を改善できるか?研究分野運動生理学研究内容私の研究のポイント研究分野運動生理学、運動処方研究内容私の研究のポイント

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