富山県立大学 研究室ガイドブック2025 工学部・情報工学部
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環境・社会基盤工学科 (b)(c)(a)36 Environmental and Civil Engineering37 Environmental and Civil Engineering28環境工学講座准教授 中澤 暦環境工学講座准教授 藤吉 奏リポートインドネシアのパル市はパル湾の最奥に位置する人口34万の中部スラウェシ州の州都ですが ( 写真( a) )、その 後方山 麓では 小規模金 採掘 (Artisanal Small-scale Gold mining; ASGM) 活動がかなり広範囲にわたって行われています。従事者は砕いた金鉱石と水と水銀を混ぜて(写真(b))、いくつかの工程を経たのち素金を得 (写真(c))、現金に換金しています。ASGM 活動現場 (写真(b)) とパル市内で大気中の水銀濃度を観測すると、どちらも高濃度であることが分かってきました。この研究では、電源がない場所で大気中水銀濃度を観測する方法 (パッシブサンプラー) の開発を行っています。多数の地点にパッシブサンプラーを設置して濃度の水平分布を明らかにすることを目指しています。さらに、このようにして得られたフィールドデータから水銀を吸入することによる、ヒトへの健康リスク評価を行っています。2017年には水銀に関する水俣条約が発効されました。水銀の地球規模での水銀排出および水銀の挙動に関する知見の集積および対策は喫緊の課題となっています。リポート南米チリの首都サンティアゴ上空:飛行機の窓から見えるアンデス山脈と大気汚染サンティアゴはアンデス山脈に囲まれているため、汚染物質が滞留しやすい環境です。特に冬は薪ストーブから発生するバイオマス燃料により深刻な大気汚染が発生するため人的活動が微生物群集や生態にどのように影響を及ぼすかを調査しています。雲の中に僅かに見える黒い点=ウルトラライトプレーン(超軽量動力機)を用いたバイオエアロゾル収集と観測大気中を漂う微生物の季節変動や気象との関係を調べています。微量でも生物に影響を及ぼす、水銀。この水銀の環境中動態や環境リスクについて、水銀汚染のないバックグラウンド地域と水銀汚染のある小規模金採掘活動地域を対象として研究しています。水銀は、唯一常温で液体の金属です。水銀の大気への放出源のうち、人為的な発生源としては、石炭燃焼由来、小規模金採掘活動由来 (この2つで50 %以上を占める) です。いったん大気へ放出された水銀は地球上を半年から2年程度巡るため、発生源から遠くはなれた遠隔地でも、高濃度に沈着することがあります。遠隔地での水銀の場として、大気汚染物質が運ばれやすい自由対流圏や極域に着目して研究を行っています。また、水銀発生源の一つである、インドネシアの小規模金採掘活動地域で、環境媒体中水銀濃度の観測結果からヒトへの健康影響の有無について研究しています。大気中の微生物(バイオエアロゾル)の動態解明に取り組んでおり、RNA/DNA解析技術を用いて、気象と微生物の関係、感染症への影響を研究しています。大気中を漂う微生物から、極めて微量なDNAやRNAを抽出・分析する技術を確立しました。また、現場で迅速に微生物を検出できる新しい分析システムも開発しています。日本をはじめ、チリ、スロベニア、フランスなどの研究者と協力して、現地調査、室内実験、情報解析により、バイオエアロゾルの環境動態、気候変動による影響予測を目指しています。研究分野環境科学 環境リスク学研究内容私の研究のポイント研究分野微生物生態、遺伝子、大気環境、水環境研究内容私の研究のポイント環境中水銀の動態とそのリスク大気微生物の生態と環境動態解析

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