富山県立大学 研究室ガイドブック2025 看護学部
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36 4Nursing Science and PracticeNursing Science and Practice研究分野基礎看護学:看護・ヘルスアセスメント・生命観研究内容私の研究のポイント研究分野基礎看護学:高齢者、転倒予防、足趾・足趾力(*) 研究内容私の研究のポイント【足趾力の測定風景】基礎看護学講座1准教授      小宮山 陽子基礎看護学講座1講師     鷲塚 寛子リポートリポート〈ヘルスアセスメント思考プロセスイメージ〉     <思想的・歴史的研究>人間は、生命現象の探究を通して生と死を分かつ根拠を提示してきました。その長い歴史は「脳死」といった現代的な問題に繋がっています。「脳死」を人の死とする根拠とされてきたのが、「有機的統合性」(身体器官・機能が自律的に連関し合い、生命全体を調整維持する特性)という概念です。この概念がどのような歴史的変遷を経て脳死の議論に導入されたのか探究しました。このテーマは、生命倫理学と科学史に関する研究であり、現代を生きる私たちの生命観・身体観にも繋がっています。<看護に関わる研究>HAは「情報収集・分析・解釈・統合・問題抽出」という5つのプロセスから成り立ちます。これらは相互連関し、かつ循環構造を有すると考えます。特に「分析〜統合」の過程は言語化が困難であり、学習課題を見えにくくしている原因の一つだといえます。この過程の可視化を目指し、現在は看護学生を対象としてHA学習に関する質問紙・インタビュー調査とその分析を進めています。足趾力足趾挟力・足趾握力・足趾10秒テストを【足趾力】とし、実態調査や運動前後の評価を行います。足趾挟力第1趾と第2趾でセンサーを挟み込み、把持力を測定します。足趾握力足趾をバーにかけ、バーを牽引する力を測定します足趾10秒テスト可動域の範囲内で足趾の完全な伸展と屈曲を繰り返し、10秒間に実施できた回数を測定します。医療や看護における生命観や身体観に関する思想的・歴史的研究と調査研究を行っています。看護実践は、人間や生命に対する深い理解に基づいています。現在取り組んでいるのは、その構造を明らかにする研究です。看護師の患者理解に繋がるテーマとして「ヘルスアセスメント(以下、HA)」に着目しています。HAとは、看護師が患者に最適な看護を提供するための思考プロセスです。このプロセス(右図)は可視化されにくく、HAを学ぶ学生から「ちゃんとできているのか分からない」などの不安の声がよく聞かれます。そこで、この思考プロセスの関係を明確化し、学習課題を抽出するための思考モデルの開発を目指しています。高齢者の転倒要因には、運動能力や筋力低下が挙げられます。しかし闇雲に運動しても効果は低く、歩行やバランスを保つ踏ん張りに必要となる〝足趾力〟に着目し、評価方法や運動プログラムの開発を行っています。転倒予防には〝足趾力〟の強化が重要であり、バランスを崩しそうになった状況で咄嗟に踏ん張れる力が必要となると考えました。そこで測定調査により、「足趾挟力」と「足趾握力」はバランス感覚と関連があることや、足趾運動により〝足趾力〟が向上することを確認してきました。今後は足趾に加え、足趾に附随する周囲筋を鍛えるなど足趾力向上のための介入方法を探究し、効果検証のためのデータ集積を目指しています。ヘルスアセスメントにおける思考モデルの開発高齢者の転倒予防を目指す足趾運動の効果検証   

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