Saidai Concierge vol.25
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Welcome to my laboratory人の脈拍に近い?植物のAEから分かること 私が取り組んでいる研究を一言で説明すれば「植物のライフログをとろう」というものです。 植物が根から水を吸い上げる際、体内で空気の泡が弾けることが分かっています。この泡の弾ける音や振動を我々はアコースティックエミッション(AE)と呼んでいますが、その回数は植物の状態によって異なってきます。このAEを人間でいう脈拍のように捉えることで、植物がどのような活動をしていて、どのような気持ちでいるのかを探ろうという訳です。 研究では、非常に微弱なAEを検知するセンサやデータを収集する機器の開発を行っています。また、この装置を使って、様々な環境下にある植物のデータを収集することも重要な研究内容です。そしてこのデータを環境データと紐づけ、天気や与えた水の量でAEの回数にどんな変化があるかを分析していきます。そうすることで初めて植物の活動状況を知る手がかりとしてAEを役立てることができるのです。様々な植物に設置可能な装置づくりの難しさ 今後の研究課題は、どのような植物でもAEの検出ができるセンサを開発することです。植物と一言でいっても、表面の固い樹木や柔らかい苗のようなもの、サボテンや多肉植物もある。AEが発生しているのなら、すべての植物で検出できるようにしたいですね。 また、私の研究ではAEの検出にエレクトレットセンサを使っていますが、その精度を上げていくことも課題の1つ。現在、例えばトマトなら1日平均で数百のAEを捉えられますが、実際にはもっとたくさん出ています。しかし、センサの感度が足りないため微弱なものまでとり切れていないのです。それがもっととれるようになれば、さらに色々なことが分かると考えています。工学部 機械工学科/蔭山研究室植物の気持ちをもっと知るためにセンシング技術を磨き上げる研究もダイバーシティが重要? 私の研究は、植物がテーマなので「これが機械工学?」と疑問に感じる人がいるかもしれません。しかし、この研究は、植物が出す音をいかに効率よく取るかというセンシング技術に関するもので、間違いなく機械工学に属するテーマです。 機械工学といえば、やはりロボットや自動車などのイメージが強いと思います。しかし、私のように変わったことをやってよいことも是非知っておいて欲しいですね。世の中、多様性が重要だといわれていますが、大学の研究もそれは一緒。色々なことをやっているからこそ、新たに生まれるものがあると思います。自ら考え発想することの大切さ 制約されずに好きなことが自由にできる——。このことが研究者として埼玉大学に感じている魅力の1つです。そして、それができるのは大学が適度な規模だからこそなのでしょう。 ここで学ぶ学生には、技術開発だけでなく、その技術の新たな意味や利用価値を見出せる発想力を身につけて欲しいですね。例えば、植物のライフログをとるというと、農業の生産効率アップに結び付けられがちですが、例えば観葉植物の管理など、アイデア次第で多様な用途に活用できるのです。今後求められるのは、そのようなアイデアを自ら創出できる人材だと考えています。message蔭山教授より受験生へ▲実験室内では、実際にトマトの枝にセンサをつけ、そのライフログを収集し、分析をしているProfile蔭山 健介[かげやま けんすけ]理工学研究科 教授1988年東京大学工学部卒業1995年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了1995年埼玉大学工学部助手2001年 埼玉大学工学部助教授2014年より現職9SAIDAI CONCIERGE

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