Saidai Concierge vol.25
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埼玉大学での植物学と運命的な出会い   塚田美樹さんは、1987年4月に埼玉大学理学部生体制御学科に入学。4年生の時に形態形成講座に所属し、菅原康剛先生(現 名誉教授)の指導の下、卒業研究を行って「植物培養細胞の超低温保存」という論文を発表しました。まさに、植物学との出会いです。この研究では、植物の培養細胞・組織を用いて、液体窒素中での生存に及ぼすさまざまな効果を明らかにしています。左上の写真は、卒業研究で得られた成果の1つで、凍害防御剤を用いた透化による保存細胞の再培養結果です。ノーベル生理学・医学賞2016への貢献  1991年3月に埼玉大学を卒業後、さらに研究を深めるため、東京大学の大学院修士課程に進学。当時、助教授であった大隅良典先生の研究室で指導を受け、修士論文「Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cerevisiae」をまとめました。この研究では、38,000株の酵母からオートファジーを起こさない酵母を調べ、オートファジーに関する重要な15個の遺伝子を見出しました。この研究成果は、大隅先生との共著論文とし、1993年、国際学術誌「FEBS LETTERS」に発表され、後に、大隅先生がノーベル賞を受賞する主要な論文の1つとなったのです。大隅先生も塚田さんの研究上の貢献に感謝しており、例えば、東京で行われたノーベル賞受賞の記念祝賀会で塚田さんの名前と写真をスライドで紹介しています。埼玉大学での、もう1つの出会い、ドイツ語 現在、塚田さんはドイツに在住。菅原先生によれば、大学院修了後にドイツに渡り、1996年に博士号を取得後、ドイツの研究機関で10年ほど研究を続け、2006年よりドイツ語翻訳家として活躍しています。埼玉大学在学中に生体制御だけでなく、ドイツ語の勉強も一生懸命やっていたそうです。活躍する卒業生恩師談話 Former teacher's talkIntroduction of a graduate2016年、東京工業大学栄誉教授の大隅良典先生が、細胞内でタンパク質を分解し再利用するオートファジーの仕組み解明でノーベル生理学・医学賞を受賞されました。受賞対象となった論文の1つに、塚田美樹さんが名を連ねていることはあまり知られていません。埼玉大学としては、ノーベル物理学賞2015に輝いた梶田隆章先生(理学部1981年卒業)に続いての快挙です。卒業生、塚田美樹さんについて紹介しましょう。恩師、菅原 康剛先生が語る塚田 美樹さん 塚田さんは朝早くから研究、その後に図書館でドイツ語の勉強と、大変真面目でした。学部時代から、ドイツへ行くことを目指していたのですね。 卒業研究では、植物の培養細胞を使って積極的な解析を行っており、実験に集中し、研究量も人並外れていた。このような姿勢は東大でも変わることなく、だからこそ、大量の酵母を分析し、オートファジーの現象を解明する大きな発見に貢献できたのでしょう。Column |コラム|塚田 美樹さんMiki Tsukada1991年3月理学部生体制御学科 卒業埼玉大学名誉教授 菅原康剛先生 埼玉大学で植物学に出会い、ノーベル生理学・医学賞2016につながる研究の一端を担う論文「植物培養細胞の超低温保存」より学生時代の塚田さん(右)と菅原先生(左)13SAIDAI CONCIERGE

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