Saidai Concierge vol.25
5/16

いうことです。どうしたらその絵巻物を自由に見られるようになるのか? そういうことを考えていました。なぜと問い続け忍耐強く、楽しむことで繋がっていった研究の道 当時、絵巻物は日本独自の絵画表現だといわれていましたが、当時の学問では、文章だけを扱い、絵がない。絵画に何が表現されているかといった図像学的観点からの研究はほとんどありませんでした。 しかし私はやはり絵とセットで研究することに意味があると思い、絵巻物の文章に語られた祈祷師や悪霊はどのような姿かたちをしているのか?それを解き明かすために、妖怪を中心とした画像の研究をはじめました。 その妖怪を取り上げるきっかけを与えてくれたのが、実はいざなぎ流だったんです。昔は、「妖怪の研究なんて。」とよく言われましたが、そのような状況の中でいつも励みにしていたのは物理学者、寺田寅彦さんの「化け物の進化」というエッセイです。 このエッセイでは、「化け物は人間がつくった最高傑作だ。しかもそれは宗教や科学、芸術とも関係している」と書かれています。だから妖怪はすごく重要で、それを研究することは大事だということです。 とても嬉しかったのは、文化功労者受章の理由です。妖怪文化のことを褒めてくださっていますが、実は、40年向き合ったいざなぎ流の研究を褒められたことがものすごく嬉しかったですね、妖怪のことよりも(笑)。 埼玉大学教養学部で秩父に行き、憑きものに出会い、大学院で四国の山の中に出かけ、どういう巡り合わせか、いざなぎ流に出会い、何だろうと問いかけたときに、妖怪研究に繋がっていった。 なぜと問い続け、どこかに答えがあるはずだと、忍耐強く、しかも楽しみながら続けることがきっと、独創的な研究に繋がる。場合によっては繋がらないかもしれません。でも信じて頑張るしかない。評価されるのは死後かもしれない。40年かかってやっと解いた謎も、本で読むと、「あー面白かった、そうなんだ」で終わってしまう。だけど、それを最初に探すのが研究なんです。コロンブスの卵なんですよ。研究は楽しい謎解き——勉強するときはまずは楽しんで欲しい 研究者の喜びは、最初に謎を解いて、それが使われていく、広がっていくことにあると思います。私はそれに50年身を任せてきましたが、もしも研究をする人がいれば、自分で楽しい謎を見つけて、楽しんで解いて、そしてできれば多くの人に共有できるかたちで発表してもらえればと思います。 研究はつらいけれど、楽しんでやるもの、これが一番大事だと思います。ぜひともみなさんも卒業論文を書くとき、勉強するときは、まずは楽しむことを一番の柱にして、頑張ってください。小松先生と山口学長、学生で記念撮影小松先生が研究した絵巻物「泣不動縁起絵巻」学生の質問に答える小松先生4SAIDAI CONCIERGE

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る