Saidai Concierge vol.25
8/16

Welcome to my laboratory小児がんに関する治療以外の深刻な問題とは 教育学部の養護教諭養成課程は、幼稚園から高校までの、いわゆる保健室の先生を育成することを目的としたコースです。この中で私が受け持つゼミでは、保健室を取り巻く環境や病気の子供が置かれている状況を客観的に見る研究を行います。そして、学生たちは、健康に関する問題や事象を社会学的アプローチで分析する「健康社会学」を学ぶのです。 例えば、私が現在取り組んでいる研究の中に「小児がんを患った子供の復学支援」というテーマがあります。 かつてより寛かんかい解(病状が落ち着いた状態にあること)する率が向上したことで、小児がんを患った子供たちが普通の学校に戻るケースが増えています。しかし、その一方で、復学した子供が学校に馴染めず不登校になるという問題が起きています。中には、そのまま大人になって引きこもりになることさえあります。 そこで「なぜ復学した子供が学校に行けなくなるのか?」を、社会学的に色々な側面から分析し、復学した子供の不登校を防ぐために教員側で対策可能なことを探す——そんな研究を学生と一緒に行っているのです。事象を集め、分析し伝えるという地道な手段が社会を変えていく 研究では、まず患児やその家族、養護教諭などにアンケート調査やインタビューを実施。様々な事象を収集し、観察することで導き出した結論を医療従事者や教育現場に伝えると共に、現実に起きている問題を世の中に示していきます。 地道な作業ですが、このことが、小児がんの子供たちが学校に戻った後も、学校生活を満喫しつつ様々なことを学び、そして将来、職を得て自らの人生を歩める——そんな社会システムを構築するための手段になると考えています。 私が研究者人生をスタートさせた際のテーマは、血友病の治療でHIVに感染した子供たちの問題でした。現在の研究は、小児がんに特化していますが、その成果によって社会的な環境が整えば、他の病気の子供たちにも恩恵があると考えて、研究に取り組んでいます。教育学部 養護教諭養成課程/関研究室医療と教育にまたがる課題を社会学的なアプローチで解決に導くProfile関 由起子[せき ゆきこ]教育学部 准教授1997年東京大学医学部健康科学・看護学科卒業2002年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得退学2004年博士号取得(保健学)2006年 埼玉大学教育学部助教授2007年より現職卒業研究はテーマの面白さが必須 とにかくゼミの学生たちには研究ができるようになって欲しいですね。ゼミでは、3年生になるとアンケート調査やインタビューによって事象を解釈する研究を行い、報告書を書くことを経験させます。そして4年生になると子供や学校に関することなら何でもよいので、研究する意義のある面白いテーマを自分で探して研究を進め、その内容を卒業論文として仕上げます。ちなみに昨年度の卒業論文は「給食のルールとその後の人生における食への影響」や「学校の手洗い場にあるネット入りの石鹸の研究」など、興味深いものが多かったですね。大学で身につけたスキルを生かしリーダーに 埼玉大学で養護教諭養成教育が始まって10年過ぎましたが、学生にはここでの学びを生かし、広い視野をもった養護教諭全体のリーダー的な存在になって欲しいです。埼玉大学で養護教諭を目指すメリットは、医学・看護学・養護学もしっかり学べることです。また、幼稚園から高等学校までの全学校種、全教科の教員育成を行う本学の課程の中で学べば、様々な教科の教員のたまごたちと同じ教育を受けることになります。その経験は後に教育現場で必要になる他の教員との円滑なコミュニケーションを図る上で役に立つでしょう。message関准教授より受験生へ7SAIDAI CONCIERGE

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る