SAIDAI CONCIERGE vol.27
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今回実現できた要因はどのようなところにあるとお考えでしょうか?堀田 学内の理解や後押しはもちろんありましたが、なにより学長がリーダーシップを発揮して、大学としての方針を明確に示したことが大きいと思います。魅力のある女性教員がいなければ女子学生も集まらない堀田 例えば理工系で女性の教員や研究者が少ないのは、そもそもその卵である女子学生が少ない―という事実が背景にあります。それ故、これまでは「理工系の女性学生を増やさなければならない」ということがしばしばいわれてきました。しかし、我々は「女性教員が少ないところに女子学生は集まらないだろう」と逆に考えています。ですから、まず優秀で魅力のある女性教員を集めることに注力しているのです。幅崎 それと、中高生のうちから女子も理工系に進みたいと思えるような仕組みを作る必要があると思います。ですから、ダイバーシティ推進オフィスも大学内だけでなく、中高生やその保護者、教員を対象に、様々な取り組みをしていく必要があると考えています。堀田 確かに、理科や数学というと、女性には向かないというようなイメージが社会にはありますね。性別で能力に差はないはずなのに―。幅崎 農学分野の女子学生の数が半数を超える大学も出ていますが、電気や土木工学になるとやはり少ないです。堀田 また大学生から大学院生、そして教員になるに従って、女性の比率はさらに小さくなっていきます。これまで大学院で博士号を取得して、研究者になる女性は珍しく、ロールモデル※6となるような人材がいなかったから、目指す人も少なかったのだと考えられます。そこで大学教員をはじめ、企業や公的機関の研究者にも女性がいることを示していくことも大切だと考えています。理工系でも、女性が活躍できる多様な進路があることを発信していきたいです。ダイバーシティ推進が学生に及ぼす効果とは?幅崎 ダイバーシティ推進とは、性別や国籍や年齢に関わらず、ハンディキャップのある方も、様々な悩みや問題を抱えている方も、誰もが持てる力を発揮できる環境をつくろうという活動です。そして、このような取り組みを進めている大学で学ぶことで、自分とは異なる個性を理解し、多様な人を大切にし、ともに生きていこうとする感覚が養われると思います。また、そのようなマインドを大切にしている大学だからこそ、学生の持てる力を発揮することができるのではないでしょうか?堀田 そうですね。埼玉大学は男性も女性も生き生きと活躍できる雰囲気や環境があるので、女子学生も男子学生も安心して、ここから羽ばたいてほしいです。幅崎 教員や職員が生き生き働くことができる環境は、学生にとっても学びやすい環境です。学生の皆さんも伸び伸びと力を発揮していただきたいです。※1 男女共同参画社会……「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」(男女共同参画社会基本法)のこと。※2 埼玉大学男女共同参画室……男女共同参画の精神に則った教育・研究・就業を実現するために設立された学内組織。※3 ダイバーシティ……多様性を意味する言葉。ダイバーシティ社会とは、性別や国籍などに関わりなく、多様な人々が力を発揮し、共存する社会のこと。※4 ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ……女性研究者が活躍するための取り組みを支援する文部科学省の事業です。支援対象には、出産・子育て・介護と研究との両立や女性研究者の研究力向上などに関して優れた取組みを行う大学・独立行政法人が選定されています。※5 彩の国女性研究者ネットワーク……2017年、埼玉県の研究機関と埼玉大学が連携して立ち上げた組織。県内の女性研究者交流会の開催、研究機関との相互訪問などによる「女性研究者の研究力向上」や「女性研究者が活躍しやすい環境づくり」「研究者を目指す女子学生の育成支援」など、多岐に渡る活動を行っています。※6 ロールモデル……お手本となる人、目標となる人のこと。用語解説堀田 香織(ほった かおり)副学長。教育学部教授。1991年 東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。2006年より埼玉大学教育学部教授。2016年度より副学長兼任。ダイバーシティ推進オフィスコーディネーター(准教授)ダイバーシティ推進員事務補佐員(NPO法人)そよかぜ保育室彩の国女性研究者ネットワークファミサポ@埼玉大学2SAIDAI CONCIERGE

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