SAIDAI CONCIERGE vol.27
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Welcome to my laboratory圧力処理や冷凍によって食品の性質を変える 生卵に大気圧の数千倍の圧力をかけると、タンパク質は変性し、ゆで卵のように黄身と白身は固まります。 私が取り組んできたのは、例えばこのような圧力処理などを施すことで、食品の物性や機能性を変化させ、高付加価値化する研究です。 圧力処理に関してこれまでの実績を挙げると、大豆やタマネギに圧力をかけて保存すると、体に良い成分のギャバ(GABA)やフラボノイドなどを増やすことに成功しています。 また、社会の要請に応える研究も行っており、例えば、東日本大震災で津波をうけた宮城県女川町の復興支援として、元漁師たちが作るイチジク葉茶について血圧上昇をおさえる効果などを明らかにしています。研究領域は食環境の上流から下流までを網羅 その他にも、研究室では食品成分の分析や新たな食品添加物の開発支援、埼玉県産の食材を使った弁当の開発(昨秋と今春にエキュート大宮で販売)なども行っています。弁当開発は栄養や食物に関する講義の一環であり、教室で学んだ知識を実践する「生きた教材」です。また研究によっては、農産物の産地に赴いて収穫することも―。つまり、“食”を取り巻く環境について、川上である製造現場から消費者に近い川下の領域まで幅広い領域をカバーしているのです。 研究は企業のオファーによるプロジェクトのほか、自ら問題を提起して進めるものの両方ありますが、いずれにせよ、豊かな“食”を実現することを目指し、「美味しさ」や「健康」というところを見据えて研究に取り組んでいます。 今後、取り組んでいきたいのは新たな調味料作り。自分が料理する際にあったらよいと思うものですが、これで皆さんの食生活がちょっとでも便利になれば幸いだと考えています。教育学部 学校教育教員養成課程/上野研究室非加熱調理加工によって高付加価値食品を生み出すProfile上野 茂昭[うえの しげあき]教育学部 准教授2000年 東京理科大学基礎工学部生物工学科卒業2005年 東京大学大学院農学生命科学研究科 博士課程修了、博士(農学)2005年 新潟薬科大学応用生命科学部食品科学科助教2009年 東北大学大学院農学研究科助教2013年より現職卒業論文を通して論理的な思考を育む 卒業論文では実験や分析などを行いますが、指導する上で、教育学部だから―、文系だから―ということは、考えないように心がけています。また、学生は卒業論文の執筆に向けて、それぞれ研究を行います。研究内容は食に関することなら自由ですが、どのような結果が出ても、とにかく最後までやりきることは徹底させています。それは、研究で得られた客観的なデータと向き合うことで、論理的な思考を持って結果をきちんと導き出すことを重視しているからです。そのような経験は、社会に出てもきっと役に立つものだと考えています。生活を支える実践科学としての家庭科 私の所属する教育学部家庭科分野は、衣食住のみならず、消費生活や保育、子育てについても学びます。私自身2児の父として子育て中ですが、家庭科分野では、子どもの生活を見る力が養われます。大学での学びが、実生活を豊かにしてくれます。 埼玉大学は全学部が1つのキャンパスに集まっているため、国内外を問わず多様な学生、教員に出会えます。 勉強する環境も教育・研究力も優れた埼大をもっと知ってほしいですね。message上野准教授より受験生へ学生が考案したレシピを元に開発した弁当「トマトクリームの焼ペンネとべジDELIの彩りアソート~埼玉県産トマトベリーを添えて~」7SAIDAI CONCIERGE

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