滋賀大学 教育学部
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永石 nagaishi toshiyuki利行滋賀大で学んだ教師力レポート10大人の夢とロマンを子どもに伝えたい「教育は “人が人を育てる”仕事。時代がどのように変わろうと、人(ひと)でなければできない仕事だと思う」と語る永石利行先生は1992(平成4)年に滋賀大学教育学部を卒業。しかし、そのまま一直線に小学校教師の道に進んだわけではありません。卒業後、金融機関に就職の後、公務員に転職、その後、学校教員へという経歴の持主です。では、「なぜ、小学校教師に?」という問いかけの答えとして返ってきたのが冒頭の言葉です。大学時代は教育心理学の教室に所属していたけれども、実際は大型2輪と少林寺拳法の部活動に夢中になっていて、今から考えるとあまり勉学に熱心な学生とは言えなかったと自身をふりかえる永石先生。しかし、大学卒業後、次第に、教育学部で学んだこと、すなわち「人が人を育てる」という教育の営みの意味がふつふつと心の中に湧き上がってきたそうです。現代社会はテクノロジーがどんどん発達し、人間が行ってきたことを機械が行うようになりつつあるけれど、「教育」という営みは人間にしかできない仕事、そのような仕事に就きたい・・・という思いが永石先生を学校教員への転職に駆り立てたのです。小学校教員になって15年。「大変なことはありませんか?」と問うと、永石先生はしばらく考えて 「あまり浮かんできませんね。もちろん、日々大変なことはあるけれど、教師をしていてよかったと思うことのほうが多いので・・・」との答え。「人間の成長の過程に関われる、大勢の人に関われる、そして覚えていてくれる人がたくさんいる」と話す永石先生の言葉の端々から、本当に人間が大好きな先生なのだということが強く伝わってきます。この永石先生の休日の楽しみは、緋色の愛車、ハーレー・ダビッドソンでのツーリング。「自然の風を受けながらゆったりと走るのが最高の気分」。学生時代から始めたバイクでのツーリングの趣味が一気に加速したのは、実は永石先生が、文部科学省から派遣される在外研修教員として、2ヶ月間イギリスとアイルランドの学校を視察したときの体験なのだそうです。イギリスでホームステイさせてもらった小学校の副校長夫妻が、なんと、揃ってバイク愛好家だったのです。自宅のガレージを開けると、ピカピカに磨き上げられた大型バイクがずらり、学校の副校長室の壁には大きなバイクの写真、という具合で、副校長先生夫妻とツーリングの話で盛り上がったことは言うまでもありません。その時に、永石先生が感じたことは、ヨーロッパには「大人が楽しむ文化」としてのバイク文化があるということでした。「日本には、性能のよいバイクを製造する力はあるけれど、バイクを楽しむ文化はない。同じことが、教育についても言えるのではないだろうか・・・」、「性能と効率優先が何事にも正しいのだろうか。日本では “文化としての教育” が置き去りになってはいないだろうか」。このように語る永石先生にとって、ヨーロッパ研修の経験は、大型2輪への思いを加速するとともに、現在の先生の教育観を形成する大きな契機となったのです。「大人が楽しむ姿を子どもたちに見せ、子どもが大人になることを楽しみにできるように」と考える永石先生の授業は、いつもワクワクするような仕掛けがいっぱいです。「子どもは成長の過程で多様な大人に出逢うことが必要です。だから学校には、いろいろなタイプの先生が必要です。自分の個性を消さずに、そのまま高めてほしい。そのためのステップアップの時期として大学生活をおくってほしい」という言葉は、永石先生から高校生諸君へのメッセージなのです。(インタビュー2006年)永石利行 (ながいし としゆき)1992 (平成4)年滋賀大学教育学部卒業、2013 (平成25)年滋賀大学大学院教育学研究科修了、滋賀大学教育学部附属小学校教諭などを経て現在、守山市立中洲小学校教頭。

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