1日本の医療・福祉供給体制の問題を明らかにし、経済学を通して解決策を導き出す最近では新型コロナウイルスの影響で患者を入院させる病床(モノ)が不足したりと、日本の医療・福祉供給体制には様々な問題があります。限りある医療資源をどのように使えば人々が健康で豊かな暮らしを送れるのか、日々進歩・変化する医療・社会環境に合わせてその答えを探究できるのが医療経済学の魅力です。私はこれまで、医師や介護労働者がどのような勤務条件を重視しているのかを解明する研究を行ってきました。医師や介護労働者へのアンケートでは、回答者が重視する勤務条件を金銭価値で測れるように工夫。職場に同僚の医師がいるかといった各勤務条件に対して、何万円の賃金増と同じ価値があるのかを明らかにしました。研究成果は、勤務条件が悪く人員不足に悩む医療・介護施設にとって、医師や介護労働者を確保するための適切な給与額や、整備すべき勤務条件を判断できる材料となります。現在は、産科・小児科医が勤務先を選択する際に重視してい療経済学とは、医療・福祉・健康に使われる資源(ヒト・モノ・カネ等)の有効活用について考える学問です。近年、医療技術の進歩によって数多くの画期的な治療方法や薬が開発されています。しかし、効果が大きな治療には多額の医療費(カネ)がかかるため、全ての患者に施すことはできません。また僻地や産科・小児科では医師(ヒト)が少なかったり、る勤務条件を、金銭価値で評価する研究に取り組んでいます。産科・小児科は数ある診療科の中でも特に医師不足が深刻であり、また女性医師が多いという特徴があります。助産師との業務分担や患者の保護者への支援といった産科・小児科特有の勤務条件の重要性に加えて、院内保育所の充実化など女性医師の確保に有効な勤務条件も明らかにしていきたいと考えています。このように医療・福祉従事者不足の問題解決に役立つ情報を提供することで、人々が安心して医療・福祉サービスを享受できる社会の実現に貢献しています。医教育者としてのモットー専門分野:医療経済学、社会保障論佐野 洋史教授 経済学部講義やゼミでは、積極的に質問する学生の姿勢をほめるといった雰囲気づくりに努めています。また学生の研究発表を聞く際に心掛けているのは、批判するだけでなく現実的な代案を出すことです。学生が代案と自身の考えの比較を通して、より良い研究にするために「もうひと頑張りしよう」と奮起してくれることを期待しています。chapter研究者たちが描く未来RESEARCHERまだ見ぬ世界をきり拓くため、一歩ずつ研究を深化させる滋賀大学の研究者たち。研究が導き出す未来、社会にもたらす恩恵を信じて挑戦する姿をご紹介します。07
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