島根大学 生物資源科学部 2022 学部案内
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こんな研究をやってます!ZoomUp!Study!地球規模の温暖化と人口増加は,食料生産を担う農業分野に,土地面積当たりの生産量の増大と二酸化炭素排出量の削減を同時に迫っています。温室は栽培不適地や不適期における栽培を可能とし,作物の品質や収量を向上させるので,園芸作物供給拡大の要として大きな期待をかけられています。しかし,地下資源由来の燃料や電力への依存度が高く,農業分野における主要な二酸化炭素排出源となっています。また,燃料や電力価格の上昇は生産者の収益減に直結します。したがって,温室栽培におけるエネルギー消費量を削減しつつ,作物生産効率を高める技術の開発が,重要な目標となっています。このような情勢のもと,温室栽培のエネルギー需要を,太陽光発電エネルギーで賄うための研究に取り組んでいます。作物の光合成と太陽光発電は共に日射をエネルギー源として機能するために,共存させることは簡単ではありませんが,創意工夫で困難を乗り越えて,新しい時代の栽培技術を実現したいと思っています。キヌアと呼ばれる雑穀をご存じでしょうか?キヌア(キノア)は,南米アンデス地方を原産とする双子葉植物です。その子実は,カリウムやカルシウムといったミネラルを多く含み,抗酸化作用や血中コレステロール低下作用を持つとされ,機能性食品,健康食品素材として世界中の注目を集めています。最近は食料品店でもキヌアが販売されていますが,それらはほぼ全てペルーやボリビアからの輸入品です。私はこの優れた穀物を国産化したいと考え,栽培方法に関する研究を進めています。日本とアンデス地方では気候が大きく違いますから,同じように栽培しても上手くはいきません。例えばアンデス地方では,1㎡の土地当たりに1〜数株程度のキヌアを栽培します。これは降水量が少なく,あまりたくさん植えてしまうと,成長に必要な水が不足することが主な原因です。日本で栽培する場合には,水不足の心配はありませんので,もっと多くのキヌアを栽培できます(1㎡に100株以上)。むしろ,キヌアは過剰な水分に弱いため,水はけの良い畑で栽培するなどの湿害対策が求められます。このように,日本の気候に合った栽培方法を確立することで,キヌアを山陰地方の特産品にできればと考えています。植物は自ら動くことができません。「その場所まで行けば、会えるよ!」,後の指導教員の言葉に乗せられて,野外の植物の研究者になりました。その場所とは?藪漕ぎをして道なき道を進み,双眼鏡で覗いた谷の向こう側へ廻り,無人島に渡って,野外の植物に会いに行きました。木に登って花を観察し,地面に這いつくばってタネや芽生えを探して,研究を進めてきました。彼らは繊細かつ巧妙に,それぞれの場所に適応して生きています。DNAを調べることで,野外での観察だけでは分からない点が明らかになります。さらに再び野外へ行ってみると,新しい世界が広がります。例えば,ある植物はDNAで複数のグループが認識され,グループ間で花の咲く時期がずれていることが分かりました。このようにして,野外の植物の生き様を明らかにしたいと考えています。また,島根県内にどんな植物がどこに,どんな風に分布しているのかについても,学生の皆さんと一緒に調査を進めています。植物環境フォトニクス資源作物・畜産学生態遺伝学栽培と発電の共存は可能かキヌアの国産化へ向けた試み野外の植物たちの生き様を解き明かす氏家 和広准教授須貝 杏子助教谷野 章教授個性豊かな教員が学生と一体となり,様々な研究に取り組んでいます。“いのち”あふれる地球を育む22

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