下関市立大学広報 第90号
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7The Shimonoseki City University Public Relations N0.902020.3.1退任のご挨拶退任にあたって 1992年4月に着任以来、平成の時代から令和の時代へと28年の長きにわたって本学で過ごさせていただきました。下関には本学着任以前より10年間在住しておりましたので、本市での生活は38年になります。教職員の皆様をはじめ多くの方々に支えていただき、本年3月末で無事にひとつの区切りを迎えることができました。あらためて深く感謝申し上げます。 先日、たまたま着任後間もない頃からの写真を見る機会がありましたが、そこには、まるで「別人」の自分がゼミコンパで談笑するシーンもありました。30代であった若き日の姿には、時の流れをあらためて実感させられました。これまで講義を通じてご一緒させていただいた数え切れないほどの多くの卒業生、また500名近くにも及ぶゼミ卒業生ならびに大学院修了生とのふれあいが懐かしく思い出されます。ゼミ卒業生のなかには、卒業後毎年欠かさず近況報告を寄せてくれる人たちも大勢います。家族の写真、子供さんが描いた絵など、微笑ましいお便りを数多く拝見させていただいており、たいへんありがたく思っております。また、まったく前触れもなく研究室に姿をあらわす「卒業生のサプライズ来訪」は、私に大きな刺激と喜びを与えてくれていました。卒業生とのしばしの会話のなかでは、当時のゼミでの発表準備等の苦労話、提出期限が厳格に決められていた「ゼミ課題ノート」提出のたいへんさなどが頻繁に出てきていました。もっとも、全員がそれを良き思い出として笑顔で語ってくれていることが、今日まで、私にとってのやりがいとなり、大きな励みにもなってきました。講義やゼミ等を通じての多くの学生とのふれあいは私にとっての宝であり、また常に真剣に学生に向き合うことができたことは、これまでの教員生活においての誇りでもあります。 研究生活の面でも、ひとつの区切りを迎えることとなりましたが、歩みは止めない所存であります。市場リスクの負担・転嫁問題に関する研究、企業経営から見た先物取引の研究は、マーケティング論の重要な部分を構成するとの認識のもとに、市場リスク問題からマーケティング論を再構成するという究極目標に向け、研究を進めて参りたいと思っております。研究に際しては、これまで多くの先生方、業界関係の皆様にご指導、ご助言等をいただいて参りました。まだまだ道半ばですので、これからも引き続き取り組んでいきたいと考えております。 28年にも及ぶ本学での教員生活を曲がりなりにも終えることができましたのは、多くの方々と出会い、ふれあうことができ、ご指導、ご支援をいただけたからこそであり、あらためて感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。 下関市立大学が生き生きとした学生、教職員のすがたで満ち溢れ、未来に向けて小さくとも光り輝く大学であり続けることを祈念しまして、お礼の言葉とさせていただきます。森 幸弘教授退任にあたって 本学赴任がバブル崩壊直後、1992年4月でしたが、私の故郷淡路島と下関とが北前船で活躍した高田屋嘉平を通じてその昔つながっていた話を、当時の市大広報に書かせていただいたことがなつかしく思い出されます。 その頃の市大は、教職員合同のチームを作って北九州下関地区の種々のスポ-ツ、囲碁・将棋なども含めた大会に、多くの先生方が参加する催しを毎年やっていました。飲み会の方も結構盛んで教員、職員そろっての気遣いは、それは大変なものでしたが、職場の雰囲気、公務の円滑化に役立っていた印象を持っています。察するに one team の良い部分を引き出す工夫だったのでしょう。私はそれを満喫した方の部類でした。 他方で当時、すでに教員組合立ち上げの動きが出ていて、発足時私もただちに参加いたしましたが、福利厚生を中心とした交渉をする組合として、全教員がメンバーとなって誕生しました。下関市サイドも鷹揚だったようです。しばらくして職員の組合も必要ではないかといった意見も出たようですが、近隣公立大学の事例も参考にして、全員参加型でなくなる恐れが大きいという判断があってそうならなかったと記憶しています。 いま思えば、その頃から市大には「個」をいきいきさせながら事を進めるという風を大切にするところがどこかあったと思われます。全国的に働き方が重要問題視され、政労使3者協議が無視できない今日、市大が忘れてはいけない基本は何かといえば、全体を良くすることに取り組むプロセスで、「個」が壊れることがあってはならない、というようにも言えるのではないでしょうか。働く人間にやさしい one team づくり重視でやっていただければと存じます。退任者の気楽さと言われそうですが、難局のときこそ、「和」を尊び、よろず「公論」で決めることで前向きチャレンジもできるのだと思います。ゼミ卒業生には、ドイツの諺「理解することは恕すこと」を贈らせてもらっていますが、このことも含めて申し上げますと、要は、理解と融和と発展を!ということでしょうか。 私の専門はマクロ経済学ですので、この分野から「外との競争」に係って最後に重ねて一言。少子高齢化時代の競争を乗り切るには、「プロセス・イノベーションよりもプロダクト・イノベーション!」が力の按配として肝要だ、と言われることがあります。大学もまったく同様で、競争的コスト削減にのみ夢中にならず、労働の質向上とともに「大学の生産物」の品質向上と適切な多様性を追求して競争に生き残る、ということだろうと思います。そしてその際、わけても長期とマクロ(全体)の視点を旨としていただきたいと存じます。 下関市立大学には28年間お世話になりました。これまでお付き合いいただきました教員、職員そして関係の皆さまに、改めて感謝申し上げますとともに、市大の今後の発展をお祈り申し上げます。ありがとうございました。素川 博司准教授

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