静岡文化芸術大学 大学案内 2024
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産学官連携を通じて、社会に役立つ人材を育む「社会に貢献する大学」を基本理念の一つに掲げるSUACには、教員の専門知識や学生の若い感性を求め、企業や行政などから共同研究・受託研究、受託事業という形で依頼を数多くいただきます。教員の指導のもと、学生たちはプロジェクトに取り組むことで視野や興味関心が広がり、さらに深い学びへと発展します。生地を生み出す人、使う人、楽しむ人が、集う場を考える遠州織物の魅力を伝え新しい価値に光を当てる地域社会に貢献しながら自分の可能性を広げる浜松市の遠州産地振興協議会からの依頼を受け、「はままつ染め織りマーケット」のイベント会場を装飾する空間デザインコンペティションにデザイン科の学生が挑戦。コンセプト立案から企画、デザイン、設計、実制作までを行いました。多くの人が行き交う浜松駅前の「ソラモ」の空間を、布を織りなす縦糸と横糸のように、人と織物が交わる「クロスロード」として空間デザインを展開。建築・環境領域で学ぶ鈴木翔太さんは、会場の出展ブースをそれぞれ45度傾けることで、店を訪れる人だけでなく、通行人も巻き込む流れを考えました。「雁が飛ぶ様子にならって建物を斜めにずらす『雁行配置』から発想しました。授業で学んだことが活きました」。平面図から立面図を起こし、実際に形にするにあたり、デザインと構造のバランスが難しかったという鈴木さん。「構造的にも予算的にもリアルな課題に直面しましたが、専門業者からプロのアドバイスを受けながらやり切ることができ、いい経験になりました」。匠領域で染色を学ぶ上田真由佳さんは、卒業前にゼミ生4人で共同制作をしてみたいとコンペに参加。「遠州織物の魅力を最大に伝える装飾とは何か」を出発点にリサーチを始め、本来なら捨てられてしまう織の端「布耳」にたどり着き、それらを再利用することで、新しい価値を生み出せないかと試行錯誤を重ねました。「布耳をほどいて一から手で染め、織り上げる作業は、作品が大きいだけに大変でした。織物関係の人たちが、生まれ変わった布を見て、その色鮮やかさに驚き、喜んでくださったのは嬉しかったです」。授業でのものづくりとは違い、作品を完成させるだけでなく、美しく展示する見せ方までを手掛けたことも新鮮だったという上田さん。「現場の方々と関わりながら、様々な刺激をもらうことができました。この経験を活かし、これからも地域を盛り上げ、良さを伝える作品を作っていきたいと思います」。今回のプロジェクトは、学生たちが授業での学びを社会という場で形にしながら、地域の産業や街のにぎわい創出に貢献する有意義な経験となりました。SUACがある静岡県西部の遠州地域は、様々な企業や産業の拠点となっています。「地域のためにある大学」として、産学官の連携を中心に「文化政策」と「デザイン」の2つの専門領域を持つ利点を活かして、これからも地域の共創関係を育んでいきます。デザイン学科荒川朋子 准教授テキスタイル/繊維造形デザイン学科 匠領域 4年三重県立津西高校出身デザイン学科 建築・環境領域 4年千葉敬愛高校出身(左)(右)※学生の学年表記は取材時(2022年度)のものです。SUAC_008クライアントから依頼があった際に「何だか楽しそうな匂いがする」という嗅覚に導かれて迷わず担当させていただきました。それはこの事業の最終着地までのプロセスにおいて、多様なアプローチとベクトルが考えられ、幾重にも展開できる面白さを感じたからです。そしてその性質は輝く原石である学生が、学外での可能性の模索、挑戦の場の提供、大学での学びと社会の繋がりという実践経験の刺激をもって磨かれる貴重な機会となり得ます。学生たちはマーケット当日も足を運び、客観的に自分の立ち位置を見つめることができました。Pick Up担当教員からSUACの特色巻頭特集 _知と実践の力         1 学びのキーワード     2 学びの現場     3 学びのその先へ上田真由佳鈴木翔太

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