プロダクト・サービスデザインアイデアスケッチやプロトタイプの制作を繰り返しデザインを練り上げていく愛知県出身。総合電機メーカーでデザイナーとして製品開発を経験した後、本学に着任。デザインマネジメント、グローバルデザイン教育を専門とし、トルコ・イズミル経済大学やワルシャワ美術大学との連携事業など、協定校との取り組みも推進する。日本とトルコの学生たちが混成チームを作り一つの課題に取り組むワークショップ巻頭特集 _知と実践の力 1 学びのキーワード 2 学びの現場 3 学びのその先へ みなさん、プロダクトデザイナーになるためには、何が必要だと思いますか? 絵を描くテクニックでしょうか? 美しいスタイリングを創り出すセンスでしょうか? もちろん、それらは大切な能力の一つですが、他にも多様な能力が必要です。 プロダクトデザイナーがデザインする対象は多くの人が使う製品ですから、多くの人に影響を与えます。製品は、人々の暮らしを創り、社会を変え、やがて文化を形成していきます。そのデザインを生み出す仕事には責任が伴いますから、まずは人を、社会の動きを、地球環境を十分に考えデザインという行為に臨まなくてはなりません。使う人が日本人でなければ、使われる国の風習や文化を理解し、環境や歴史を含めて、その人の気持ちの動きやそれに影響を与える要因をとらえるのです。このような役割を果たす製品をデザインする時には、もはやモノそのものだけではなく、サービスやそのシステムも同時に考える時代になりました。 そのためのプロセスでは、 調査(市場・環境・技術背景等)▶分析▶コンセプト立案▶具現化するアイデアの創出▶プロトタイプの制作▶検証▶詳細なデザイン設計▶量産のための設計▶プロモーション▶販売▶検証を繰り返します。製品の条件によっては、プロセスの途中から出発することもありますし、途中から■ることもあります。アイデアは様々な段階で生まれ、様々な事象と結びつき、様々に展開するからです。調査からコンセプト立案に至るまでには、課題解決だけでなく、顕在化していない課題を発見することも大切です。過去には、外観にエステティック(審美的)なデザインを施すのがデザイナーの仕事と誤解されていた時期もありましたが、近年は課題発見や解決方法を見出し、それを具現化する計画立案もデザインの仕事であることが理解されつつあります。一方、過去のエステティックに偏ったデザインの誤解を解くことに注力するあまり、この部分が忘れられがちになることもありますが、誰しも美しいものに心を奪われるように、エステティックは人の心を動かす機能を果たす重要な要素です。 このように述べると、全てを担うデザイナーになるのは大変そうですよね。しかも、劇的なスピードで変化し続ける社会では、全てを把握することなど至難の業です。こうした背景から、様々なジャンルで共創(コ・クリエイション)の取り組みが進んでいます。ユーザーと企業はもちろん、電機メーカーが化粧品メーカーと、自動車メーカーが医療関係者と、様々なステイクホルダー(利害関係者)が力を発揮して、新たな価値を創造するのです。 さて、みなさんは、この共創チームにどのようなメンバーとして参画しますか? 全て一人でできるなら、チームで創る必要はないですよね? チームの一員として活躍できる自分のスキルをこれから磨いていきましょう。それは、何でも構いません。これから先、社会の中でデザイナーに求められる価値が変わっていくからこそ、時代やニーズに合わせて形態を変えて新しい価値を創造していくことが大切だと思いました。私もそんな共創メンバーの一員として活躍していけるよう、これからもたくさんの経験を積んでいきたいです。岡田 夏奈 デザイン学科 3年 愛知県立豊橋東高校出身※学生の学年表記は取材時(2023年度)のものです。SUAC_012特別誌面講義 デザイン学部編 【科目/プロダクトデザインプロセス】高山 靖子 教授SUAC社会は共創するデザインを待っている
元のページ ../index.html#13