公立諏訪東京理科大学 大学案内2023
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計測12「逆強化型環境シミュレータによるシステム制御の最適化」というテーマで、山田教授、新日本空調(株)と一緒に、空調の制御システムの研究を行いました。室内の温度は、時間帯や部屋の広さなどの要因で変化します。まず、センサで集めた情報から、その部屋の状況をシミュレーションします。室温を最適に制御するには、エアコンの出力を決めると室温が予測できるような室温シミュレータを使います。通常のシミュレータは物理的なモデルを元に動作しますが、部屋の形状、人の数、機器の数や運転状況などは場所によって様々で、すべての条件に合わせてこの物理的なモデルを事前に作るのは困難です。そこで、逆強化学習を用いて、実際の室温変化から物理モデルに代わるものを作り出します。それによってシミュレーションが可能になると、リアルタイムの情報から未来の温度変化の予測が可能になります。さらにその予測に対して、空調機器にどのような制御機器のパラメータ(制御の条件)を、どういう組み合わせで設定すべきかを導き出すことで、効率よく快適な温度に近づけることができます。この研究は、空気調和・衛生工学会でも発表し「優秀講演奨励賞」をいただきました。研究をしていく中で、Alの知識はもちろん、統計やデータ処理などの知識も重要だと感じました。現在、優れたAl技術の中に取り入れられているのがディープラーニング(深層学習)の手法これまでの研究の中で、「自分が関わったものが、実際に世間で使われて人のためになっていている」ということに、やりがいや喜びを感じました。今後社会に出て、例えば医療だったりインフラフラだったり、より多くの人の日常を支えるための、新たなシステムや技術を考えていきたいと思ってっています。研究の中では、様々な方法を試して、ベストな方法を見つけ出し、それを実現してきましました。その経験を活かして、既存のシステムや固定概念に囚われず、幅広い知識を吸収して、人の生の生活に役立つより良いシステムや技術を生み出していきたいと思います。AI技術による空調制御システム。空間の状況のシミュレーションと、空調をどのように制御するかをAIが考えて、効率的に最適な温度に近づける。私は、実際に企業の方と一緒に、世の中に提供する製品・サービスを研究していました。これは、学内で完結する研究との大きな違いだと思います。研究から製品化するまでの間には、様々な条件や制約があります。その条件や制約をクリアしつつ、自分の思い描くベストなものを製品として実現させる、という力が身についたことは、大きく成長できた部分だと思います。様々な制約の中でも、理想を実現。特集「本気」から「未来」をつくる熱き挑戦者たち[ 空調制御システム]ですが、ディープラーニングでAlを強化するためには、インプットが重要です。どういったデータが必要なのか、逆に不要なのかを判断できること、そしてアウトプットの結果を理解し意味付けするために必要となるのが、統計についての知識です。さらに、進歩が速いAlの分野では、クラウドを使ったサービスなど、日々新たな技術やサーピスが生まれています。それらを学びつつ、いろいろな手段の中からゴールに結びつく最適な方法を考える。大学院修了後も、その手段をできるだけたくさん吸収したいですね。例えば学会などでも、人の発表を聞くと「そんな方法もあるんだ」と気付くことがあります。自らアイデアを探しているだけでは、自分と似通った考えや限定的な情報が集まってしまうこともあります。より広い視野を身につけるためにも、自分とは違う意見や考えに触れて、学んでいきたいと思います。AI私の 成長POINT!制御判断センサ将来の自分像多くの選択肢から 「ベスト」を見つけ出す。固定概念を取り払って、新しいシステムや技術を。

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