公立諏訪東京理科大学 大学案内2023
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14私は、「HIV関連神経認知障害の早期発見」に関する研究を、医療系の大学や専門機関などと共同で行っています。現在AIDSは、画期的な薬の開発により、病気の発症を遅らせることが可能になっています。一方、HIV感染者に、一定の割合で認知症の症状が現れるHIV関連神経認知障害(HAND)の発生が確認されており、抗HIV薬の飲み忘れなどに繋がる場合があります。山口研究室では、以前から認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の早期発見のためにVR技術を活用する研究を行ってきました。この技術が、HANDの中で最も軽度なANIの早期発見にも応用できることから、現在の研究がスタートしました。ANIの診断には、スクリーニングテストが用いられます。従来の紙ベースで行われているこのテストでは、認知機能の低下を正確に診断できず見落とされるケースもありました。研究では、このテストをデジタル化し、タブレットを用いた検査システムを開発しました。この方法では、テストによる認知機能の評価に加えて、タブレットを操作する指の動きや回答にかかった時間など、様々な情報をデータとして取ることができます。加えて、テストを受ける被験者の様子を撮影した映像から、手の動きなども含めた情報を取得し解析することで、より精度の高い検査結果を得ることが可能になりました。これは、認知機能の低下が患者さんの動作の中に顕著に現れることがあるため、今後は、大学院で現在の研究をさらに深めていきます。そして将来は、プロダクトデザイナーとして製品開発、特にUI*1やUX*2のデザインに携わりたいと思っています。VRの世界でのUI/UXというものはまだまだ発展途上の分野ですが、この研究に携わったことで、UI/UXがひとの行動に与える影響を感じることができました。VR空間内で表現するプロダクトのデザイン、例えばボタンの形一つが、人の行動を変化させることができます。実世界、VR空間を問わず、快適性の向上や新たな技術や製品開発の中で、研究から得た知見を役立てたいと思います。*1 UI:ユーザーインターフェイス。ユーザーとサービスやプロダクトとの接点となる外観(デザイン)、操作性、機能性など。*2 UX:ユーザーエクスペリエンス。ユーザーがプロダクトやサービスを通して得られる体験。考えや研究成果を言語化し、正しく伝えることの重要性を感じています。論文発表などプレゼンテーションの資料作りでは、自分の研究成果をわかりやすく伝えるよう心がけました。資料に文字を詰め込みすぎないことや、見ている人の目線を効果的にコントロールすることを意識して作っています。この「伝える力」は、研究室に入って大きく成長した点だと思います。・社会活動のバリエーション向上・長期的社会活動の快適性向上仮想世界の体験価値向上を目指す中での課題を解決し、実世界と仮想世界のシームレスかつ高度な融合により、新しい世界の創造が期待できます。伝えるための、効果的な資料作り。特集「本気」から「未来」をつくる熱き挑戦者たち[ 研究室のビジョン]新たな文化経済圏の創発・持続可能な社会の実現その行動指標も判断に加えたことから精度の向上につながったものです。普段私たちが、日常生活の中で料理や洗濯などを行う際、頭の中では複雑な情報処理が行われています。今後の研究では、この日常の動作をVR空間で再現するとともに、その一連の動作の中にスクリーニングテストを組み込むことで、さらに検査の精度を高める事が目標です。本研究室では、国内外の大学や外部の専門機関とも共同で研究を行っており、本学だけでは得ることができない知見や経験が得られることが魅力の一つです。さらに研究室内では、私のような医療分野に関わる研究のほかに、食、オフィス、マーケティング分野など、様々な分野でのVR技術の活用を研究しています。現在の研究や技術開発がさらに進めば、仮想世界での体験の“日常化”や実世界の社会活動とのシームレスな融合も実現できると思います。私の 成長POINT!高度な融合仮想空間の社会活動物理空間の社会活動・物理空間の分散化・持続可能な社会の実現将来の自分像UI/UXデザイナーとして、新しい体験や価値 を提供したい。

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