公立諏訪東京理科大学 大学案内2023
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18渡邊研究室では、主に植物栽培を中心に研究する班と、有機薄膜太陽電池を作製する班の2つに分かれます。私は後者の班で、印刷技術のひとつであるインクジェット法を用いて、有機薄膜太陽電池を作るという目的で研究を行いました。元々研究室では、植物の栽培と両立して発電ができる有機薄膜太陽電池を作製していました。これは、光を透過するごく薄い太陽電池を作製し、発電をしながらその下で植物の栽培を行い、発電と植物の栽培を両立することを目指した研究です。研究室のテーマにもあるように、作物を栽培するビニールハウスにこの太陽電池を取り付け、「発電するビニールハウス」を作ることが目標です。この有機薄膜太陽電池の作製方法の一つに、スピンコート法というものがあります。これは、太陽電池の材料をスポイトのようなもので台の上に垂らし、その台を回転させることで生まれる遠心力で膜を作ります。この方法では、膜は均一な厚みに仕上がりますが、材料の90%以上が飛び散って無駄になってしまうというデメリットがあります。そこで昨年度からスタートしたのが、インクジェット法による印刷の研究です。インクジェット法であれば、ピンポイントで必要な箇所に印刷することができ、材料の無駄は大幅に削減されます。その反面、膜の厚みにムラができ、発電効率が下がるという課題もあります。この研究はセイコーエプソン(株)と共同で卒業後は、共同研究を行っていたセイコーエプソン(株)に入社します。引き続き企業側の立場でこの研究に携わり、大学とも関われたらと思います。一方で、元々機械の分野にも興味があるので、ロボット関連など様々なことに関わりたいとも思っています。渡邊研究室では、工学部でありながら農業に関わる研究も行っていますが、思わぬ分野がつながり新しい技術が生まれることもあります。先生の「楽しんでやろう」というスタンスを大切に、様々なことを楽しみながら吸収し、さらにそこから新しい技術を生み出すことができればと思います。ソーラーマッチングにAIを活用し、マテリアルズ・インフォマティクスを利用したより高効率な太陽電池素材の探索を目指します。私の 成長POINT!「結果を予想する」。それが身になる学びへ。特集「本気」から「未来」をつくる熱き挑戦者たち[ マテリアル DX × 環境エネルギー分野]行っており、まずは「発電できる電池を作る」というところからスタートしました。電池の作製では、富士見町にあるセイコーエプソン(株)のラボへ伺い、印刷の工程から参加します。その後研究室で、できあがった電池の性能を調べます。太陽光に近い光を発するソーラーシミュレータを用いて電池に光を当て、出力される電力や変換効率がどの程度かを測定し、その下の農作物についても光合成測定を行います。さらにその結果を踏まえて、電池の性能を上げるために新たな試作と実験を行います。まだ研究が始まったばかりの技術なので、実用化までは時間がかかります。まずは、家の窓ガラスに貼ってスマートフォンを充電したり、インクジェットだからこそ可能なデザイン性のある形状を試したり、大学では今後の活用を模索し研究が続いていきます。半導体材料太陽光発電&農業試験データベース栽培環境最適化材料探索有機半導体材料データベース材料開発ソーラーマッチング地球に降り注ぐ太陽光エネルギーのトータル利用効率最大化という観点で、太陽電池側、農作物側、両方をチューニング太陽光発電農業試験農業IoTAI卒業研究では、実験の前にどんな結果になるのかを予想します。そして得られた結果から、なぜその結果になったのか、次はどのような結果を目指すのかを考えて次の実験に取り組みます。このように研究に向き合う中で、受動的に学ぶよりもより一層知識が身につくようになりました。これからも、何かをする上で予想を立てて取り組むことは、自分の成長につながると思います。将来の自分像一つの分野に特化せず、多くの分野に関わり、複合的に学び、形にできる人を目指して。

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