公立諏訪東京理科大学 大学案内2023
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40素材を接合させた試験片に負荷をかけ、形状の変化や壊れ方を検証します。橋元 伸晃 教授 私の研究室では、まず社会課題(世の中のお困りごと)ありきで、それをいかに工学で解決するか、というスタンスで研究を行っています。その研究テーマの中の一つに、「一側性難聴者にステレオ聴覚をもたらす手法の研究」があります。一側性難聴とは、片耳だけに聴力障害がある場合のことで、実際に研究室の学生が一側性難聴者であったことから研究がスタートしました。音がどの方向から聞こえてくるかを判断し、その方向に意識を向ける能力を「音源定位」と言いますが、一側性難聴者は聴覚が片方に制限されるため、この音源定位が困難です。すると、例えば車が迫ってきた時などに、危険を回避するのが遅れる可能性があります。そこで、音源定位の認識をサポートするデバイスとして、音を拾い、皮膚刺激で音源方向を伝えることができるヘッドギアを作成しました。頭の周囲(前後、左右、頭頂部)の皮膚に電気刺激を与えるアクチュエータと、周囲の音と方向を拾うマイクを設置します。そして、マイクで拾った音を基に皮膚に刺激を与えることで、音の方向が認識できるかを検証します。研究では、部位による刺激の感じ方の検証や、電気刺激の強さを変えて実験を行い、データを計測しました。電気刺激は不快感を感じる場合があるため、振動によって皮膚を刺激する方法を検討するなど、課題から改良を目指しています。学生が感じる社会課題から、学生発信で、新たな研究や技術が生まれます。実験をコンピュータ上でシミュレーションし、接合部に掛かる負荷を可視化。電気刺激を与えるアクチュエータと、周囲の音を拾うマイクを取り付けたヘッドギアを装着。志村 穣 准教授現在、運輸・車両分野の構造体は、様々な材料で構成されるマルチマテリアル化が進んでおり、これを実現するための接着接合技術が注目されています。私の研究室では「高強度接着接合技術の検討」をテーマに、軽量で高強度な接着接合技術の実現を目標に研究を行っています。接着剤を用いて異なる材料(主に金属と樹脂)を接合した試験片を製作し、引張りや曲げ等の負荷をかけて、どれくらいの荷重で壊れるか、どれほど伸びるか、どんな壊れ方をするか等を実験的に調べます。また、実験状態をコンピュータの中で再現したシミュレーション(CAE)を行い、接合部にかかる力や形状の変化などを予測します。その結果から、より強度を上げるための形状を検証します。接着強度を向上させるには、接合部の形状を変えるなどの方法があります。例えば、電気化学的な処理で接着面に微細な形状を作る、接合面を曲面にして接着面積を増やすなど、様々な方法が挙げられます。このような接着接合技術は、今後さらに加速する自動車のEV化においても活用が期待されます。車体の軽量化が必須となる中、樹脂と金属との接合に対して接着接合技術が用いられるためです。これらの技術が進化することで、SDGsにある脱炭素社会の実現や、環境省が推奨するゼロカーボンアクションに寄与することができると考えられます。学生も一人の研究者として、研究テーマに関しては、基礎研究から出口探索まで責任を持ち研究を実施。社会課題解決を目指す、センシングデバイス研究。金属と樹脂の接着接合技術で、脱炭素社会の実現へ。

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