40研究室では、企業との共同研究を含め様々なモータを扱っています。今村 友彦 教授 燃焼現象は、物質の持つ潜在エネルギーを熱の形で取り出す過程です。得られた熱エネルギーはエンジンなどの動力や発電などに用いられる一方、うまく制御しないと火災・爆発事故に至り、悲惨な被害をもたらす可能性もあります。そこでいかに効率よく、かつ、有害物質を出さない燃焼技術を生み出すかが重要です。そのために、物質が燃えるメカニズム(着火)や、燃焼の伝播、排ガス特性などの学理を探究し、同時にそれらの知見から、どのように効率よく燃焼させるか、また消火するか、といった工学的応用法を研究しています。燃焼現象の科学的解明のテーマでは、カーボンニュートラルの観点から脱炭素エネルギー(水素、プロパン、メタン、アンモニアなど)に注目し、特に流れがある場合の可燃性ガスの着火のメカニズムについて研究を行っています。電気スパーク、ホットプレート、レーザーなど様々な着火源を用いた実験や、コンピュータシミュレーションなどにより、多様な状況での着火の成否を実量的に予測する方法を調べています。ほかにも、水や不活性ガスが使えない宇宙船内での火災を想定し、火炎を掃除機のように吸引して消火する方法の研究も行っています。この技術は宇宙船内の標準的消火設備の開発にもつながり、より安全な宇宙旅行の実現に貢献できると期待されます。これは学生の希望から扱い始めた研究テーマです。学生たちは、自ら主体となって実験内容の検討や文献の調査を行い、研究を進めています。コンピュータ上で、モータのシミュレーションを行う様子。装置に着火。ここから炎を感知するセンサ付近へ移動していきます。大島 政英 教授本研究室では、主に磁気浮上式リニアモータやベアリングレスモータ(磁気浮上モータ)の電磁界解析、磁気回路や制御系の設計、試作、実験・評価を行っています。モータはその回転を高速化すると小型化が可能になったり、同じ大きさならより高出力なものにすることができます。ベアリングをなくしたベアリングレスモータは、磁気で浮上させた状態で回転しますが、機械的な接触がない分高速化が可能で、効率を上げることができます。また長寿命でメンテナンスの必要性もなく、既存のモータと比べて長期的なランニングコストを抑えることができます。現在は、ベアリングレスモータの制御にAIを用いる研究も進めています。例えば、機械的なアンバランスが浮上体にあった場合、回転によりどうしても自然に振動が発生し、軸がずれてしまいます。そのずれを数値化し、中心軸に戻し安定させるための指令値をAIによって予測するというものです。ここでは、強化学習などの手法を用いて過去のベアリングレスモータの回転軸の振れ回り等を基に軸が中心に近づくように学習させます。これらはコンピュータ上のシミュレーションによりデータを算出し、ベアリングレスモータを動かすためのプログラムに組み込み、制御します。ベアリングレスモータは様々な分野に応用できますが、その一つが工作機械への応用です。現在トライしているAIによるモータ制御は、こういった工作機械に利用されるモータなどへも適用でき、ベアリングレスモータの応用範囲もさらに広がると期待できます。センサが反応すると装置が作動し炎を吸引。吸い込まれる瞬間青白い炎に。燃焼現象の学理を工学的に応用し、「安心・安全」につながる技術開発を。応用が期待されるベアリングレスモータ。その制御に、AI技術を活用。
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